月別アーカイブ: 2017年9月

恵みの雨

だいだい思う通りの産卵状態になった。

これから春先までは朝の採卵が大変になってくる。休み明けのFさんに2つほど仕事を頼みたく、早朝から前倒しの採卵を済ませて配達に出掛ける。

今日は予報以上に雨が降った。給餌は出来ないだろうが、採卵しながら各鶏舎の飼料の残量を確認すると数箇所は補充しなければと心配しながら車を走らせた。

10時半すぎにFさんからのメールが届く「雨がじゃーじゃー降りだけど餌入れはどうしますか?」との問い合わせ。

電話で折り返して、Iさんが給餌が出来たか確認する。電話での会話が苦手な彼が、ゆっくり言葉を捜しながら応えるのを心を整えながら待つ。

彼がポツリポツリ言葉を繋げる間、受話器から鶏の賑やかな鳴き声が聞こえる。

「山側と14、15の鶏舎は、みゆきちゃんが入れました」とのことで安堵。

採卵を済ませ配達に出掛ける7時前ごろからポツリポツリと雨が降り出し、Iさんが農園に到着する8時半ごろは私も合羽に長靴姿で配達していた。

雨の合間を見て、私が心配していた補充が必要とする鶏舎を手早く済ませてくれていたことに、またひとつIさんへの信用が厚くなった。

おかげで、恵みの雨と感謝することができた。

あだちまさし。

秋の訪れを告げる彼岸花

秋の訪れを告げる彼岸花。

農園の入口の大きな柿の老木の根元に毎年、顔を出す。老木も彼岸花も私たちが営みを始める、ずっと昔から、このサイクルは変わらない。

朝晩、めっきり涼しくなり過ごしやすい気候になってきた。

鶏の産卵状況も上向きになり、鶏が産み落とすタマゴを血眼になって集卵する時期から、これから春までは鶏が産み落とすタマゴに追われる時期になってくる。

Fさんと朝の集卵を終え、草刈機を担ぐ。

刈っても、刈っても振り返ると草が伸びる時期は過ぎた。少しずつ仕事をシフトチェンジしていく。

私が使っている草刈機はホームセンターで5年前に買った背負式。安価で買い求めた分、保障期間が過ぎてから故障がち。

修理は近所の農協営農係の「ヤマモトさん」にお願いするが、ホームセンターで買ったので、いつも機嫌が悪く、一言二言、小言を言われストレスが溜まる。

農協でも同じメーカーを主に扱っているが、ホームセンターで販売されている機械は海外で生産されているものが多いらしく、そんな小言を言われながら機械とヤマモトさんの機嫌をとる。

今年の草刈り初めに、機械がヘソを曲げ、仕方なしに修理をお願いしたところ、「そろそろ寿命かもしれんねぇ」と農協が推奨するパンフレットを差出しながら渋々といった具合で作業して頂いた。

このシーズン、草刈機が一度もヘソを曲げることなく気持ちよく仕事をしてくれ、シーズンオフが目の前に迫った。

だいたい週に3時間から8時間程度、私も汗を流したが、よく草刈機も頑張ってくれた。

自分でメンテナンスできる部分を交換したり、グリスを入れたりして、来年に備える。

きっと、この調子だと来年も「小言」を言われなく済みそうで安堵する。

あだちまさし。

佐々並の新米

ごはんが一番美味しい季節到来。

タマゴのお客さま木村さんに先月注文していた佐々並の新米「高食味コシヒカリ」が届いた。

木村さんは月に数回ほど来園され「使いものにするから」とタマゴをお買い上げ下さる。日々、大規模な圃場と向き合っておられるので、季節ごとの農作業の苦労を共感して下さる。

時折、佐々並の「豆腐」や萩で評判店の天ぷらをアツアツで差し入れて「美味しいから食べてみぃさん」と置いて帰られる。

私は作業の手を動かしながら少しの時間、情報交換をさせてもうらうが、この木村さんに好感が持てるのは、農作業の愚痴やボヤキではなく、言葉の端々から、お米への「愛情」や農作業への「情熱」をお察しする。

歳の頃は60代半ばとお見受けするので、夏場、大規模な水田の畔草刈りだけでも相当な肉体労働だろうが、温厚な語り口で「サラッ」と話を切り上げて帰られる。

4月下旬、「そろそろ田植え準備でバタバタしちょる」と言われ、田植えはいつですかと尋ねると「5月あたま」とのこと。

農園周辺の稲作農家さんより10日ほど早く、自宅がある山陽側からすると20日ほど早い。理由を尋ねると「佐々並は日照時間が短いから」

山口県のほぼ中央、中国山地の山々に囲まれた地域なので「なるほど」と納得した。

さらに木村さんが「あまり知られてないけど、食味値は県内でトップなんよぉ」と控えめに話されるので、作業の手を止め「佐々並米」の特徴をじっくり聞かせて頂いた。

蛍やサワガニが水辺に生息し、鮎が清流を泳ぐことはよく知られている。まずは「水」。

あと昼夜の「温度差」。体験したことはないが、昼間に気温が上昇しても、夜には涼しくなる中山間地、特有の温度差。これが美味しい「お米」が出来るミソなんだそう。

稲は昼間の光合成でデンプンを作り、夜間に穂へ蓄えるが、夜の気温が高いと蓄えたデンプンを消費する。登熟期は夜の気温が低いことが重要になる。

傾斜があり、圃場条件としては決して恵まれている地域ではないが、この「温度差」と「水」が昔から良質米を作ってきた。

あとは、生産者の愛情と情熱。その年々の天地の恵み。

5月下旬、田植え作業などをひと段落した木村さんが来園。自家消費用で保冷庫に残しておいた米だけどと前置きし「試しに食べてみぃさん」と5キロほどお裾分け頂いた。

早速、我が家、自慢の「ガス炊飯器」で試食する。炊き上がる時に炊飯器から漂う匂いが食欲をそそる。炊き上がりの、ひと粒、ひと粒の米の艶もキレイ。口に入れた時の甘さというか、美味しさは最高だった。

ただ、私の味覚は、それほど自慢出来るものではないと感じていたので、この味を、如何に人へ伝えるか躊躇してたところ、何も知らずに弁当を持って通学した高校一年生の長女が「今日のごはん!!めっちゃ美味しかったぁ!!」と帰宅する。

「冷めても美味しい」のである。

やはり間違いないと我が心の中で、静かに「ガッツポーズ」をして、木村さんに新米を僅かだが注文したのが先月。

新米が届き、日頃、お世話になっている方に喜んで頂きたいと、佐々並米の説明を添えてお届けした。

自然が豊かな佐々並で、愛情を込め、情熱的に働いた木村さんの「新米」

今年も天地の恵みを受け、最高のお米が出来たことだろうと思う。

お届けした方が「めっちゃ美味しい」の笑顔になってくれると私も嬉しい。

あだちまさし。

窮屈な最後の夜

8月、猛暑の生産減少で、予定どおり鶏舎のローテーションが出来ず。老鶏を出荷する目処がなかなか立てられない。

朝夕の涼しさもあり、日増しに生産も上向き、やっと思い描いた状況まで、たどり着いたのが先週。

日長が日増しに短くなる時期は若鶏の産卵率上昇がスローペースなので、これも気がかり。

下関にあった食鳥加工場が廃業してから、久留米か小倉の加工場にお世話になっている。以前は仕事が終わって、下関まで軽トラックで運んでいたが、今は仲介業者や加工場のトラックに回収してもらう。

運搬の手間は減ったが、ロットが大きいので農園の鶏出荷には少々重荷になってきた。

九州までの運転、燃料コストを減らすか、生産効率の悪くなった鶏の飼料代を減らすか、常に神経をすり減らす。

毎日出荷するタマゴを待って下さるお客さまのご予約も穴を空けることは出来ず。

ただ、月末のヒナ受け入れまで、出荷を済ませ、堆肥の搬出、鶏舎の清掃、床の発酵作業、および鶏舎の補修。そのスケジュールを組み立てると今週の出荷が絶対。

9月10日の日曜日。タマゴを触りながら鶏の調子を計る。産卵の増減、各鶏舎のタマゴの艶、若鶏の産卵状況。

見切り発射状態だったが、業者に連絡し、急な出荷の予定をつくってもらった。

私からは来週の出荷を希望したが、先方から「13日の水曜日に近くまで少ロットの回収に行きますので、その便に併せて下さい」と返答あり。

大きなロットを揃えなくても受け取り可能とのことで、夏場の生産落ち込みと出荷の遅れを取り戻すことが出来た。

水曜日は午前中、小野田市内を100件弱配達するので、昨日の夕方、Fさんに休日出勤してもらい、捕鶏作業をして翌朝、出荷する鶏をカゴに詰める。

気温が高い時期に餌と水を切り、狭いカゴに押し込めて時間を置くと、熱中症や脱水症状、ストレスでカゴの中で死鶏が増える。

昨日は朝の予報では「曇り」だったが、午後から日差しがさし、気温もやや上昇。いつもは10羽入れるところを8羽に抑え、少しでも風通しが良いようカゴを平積みして、間隔を開け鶏舎内に。

私たち人間の都合で、窮屈な農園での最後の夜。

心が痛んだが、今朝、一羽も命を落とすことなくトラックに乗った。

命の恵みに直接触れる「商い」をしている。生産効率で命を絶たれる経済動物は決してペットとは違う。

何年も、この営みを続けてきているが、この作業は笑顔が溢れる作業ではない。

ただ、ただ鶏に感謝。

あだちまさし。

人の力におよばないこと

「四季の変わりは人の力におよばないことである。物事は時節に任せよ。」

昨夜から予想以上に雨が降った。出来なかった仕事が二つ。草刈りと、薪が湿ったため焼却作業。

降雨量が少なければ、今日から井戸周辺に散水する予定だったが、井戸の水位は持ち直したので、するべき仕事が一つ減る。

一歩進んで、二歩下がるといった具合の一日だった。

今週はじめから産卵状況が上昇傾向にある。もう一段、生産の上積みしたく、先月より更に注意しながら鶏舎を周り採卵する。

タマゴの重さ、艶も少しつずつ増してきた。もう少し、もう少しの毎日。

多少、蒸し暑さは感じたが10日前とは大違いの環境で仕事をしている。肉体的には楽になったが、夏場の疲れと緊張がほぐれたせいか、なぜか疲労が蓄積する。

隣接する耕作放棄地をイノシシが荒らしだしたのは6月くらいから。

毎朝、目にするイノシシが耕した光景に心が沈んだ。私たちのテリトリーまで侵食して来たので、400メートルの防獣ネットを張りなおし、しばらくは被害がなかった。

猛暑の夏、噛み千切られたネットを保全しながら、何とかやり過ごしたが、ここ最近「ウリボー」2頭が小さく足あとを残す。

鼻先からシッポまで約50センチほどの見た目には愛嬌があるが、ちょこちょこと目にすることが増えた。

夜中に大きなイノシシが鼻で、ミミズなどを探して掘って崩れたネットの隙から侵入してくる。

いつもは夕方に姿をみせるが、今日は曇りの「ドシャ降り」だったので、朝から来園。

棒っきれを振り回しながら「コラーッ」と言って追いまわし、ずぶ濡れになる。

逃げる経路を確認したので、また「ネットの補修」を明日。少々うんざり。

市内でも「超高齢過疎地」で私たちも農園を営んでいる。地元の農家さんも「獣被害」にはあきらめ顔。

「私たちの人口が減るより、イノシシの頭数が増えるのが早い」

時節に任せたいが、本当の「共存」」できる道はないのか、心底考える。

あだちまさし。