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営む

「営む」

○意味:営むとは、忙しく仕事をする。生活のために仕事をする。経営する。職業としてする。神事・仏事を行う支度をする。
○語源:営むは「暇がない」「忙しい」という意味の形容詞「いとなし(暇無し)」の語幹に、動詞の作る語尾「む」が付いた語で、元々は「忙しく物事をする」「せっせと務める」という意味であった。怠ることなく物事に務める意味から、営むは「執り行う」「準備する」「経営する」という意味を生じた。  語源由来辞典より

師走。今年も残すところ10日ほどになった。
大晦日までのタマゴの出荷予定が埋まった。定期のご予約以外で農園に買い求めに来られるお客さまは、いつも鶏の鳴き声などを聞きながら世間話をし、現場の状況を理解して下さっているので、年末の二日間に受け取りが集中する。それに加えて、年末の繁忙期を理解して下さる定期予約のお客さまにお届け日を少し後にして頂き、やはり年末2日間に集中させて師走の配達予定を立てる。こんな感じで一年の仕事を終え、紅白歌合戦が始まるころには、毎年バタンキュウになる。

支えて下さるお客さまがあっての仕事なので、ただただ感謝の「営み」。

鶏にお客さまに感謝して、この時期は「毎日2個ずつお願いします」と深く頭を下げても無理な話なので、生産に弾力を持たせながら、生産の上限のピークを、この時期に合わせながら日々の仕事をこなしていく。

近年、養鶏業の一戸あたりの飼育羽数は年々増加している。少羽数の業者は年々淘汰されていき、薄利多売の過当競争が続いている。この流れに飲まれないよう仕事を進めているが、周囲の環境は年々厳しくなる。

年末年始は、飼料会社、それを運ぶ運搬会社、梱包資材の仕入先、廃鶏を出荷する食肉処理場の発注、予約をするのは、大きなロットが優先されるので、かなり神経を使う作業になってきた。その算段を考えながらの年末作業は、何度経験しても慣れないもので「忙」の一字が常に頭について回る。

ついつい「忙しい」という言葉を口に出しそうになるが、それはグッと堪える。鶏は一日2個タマゴを産まないわけで、気忙しくなるのは自分の「準備不足」だから。

お客さまから「忙しそうですね」と言われると、自分の「経営する」という努力不足を感じながら立ち振る舞いを見直すと、少し恥ずかしい気持ちになったりする。

毎年、この時期「気忙しさ」を後押しする要因は自分で解決できることがひとつ。今年は、自分の力で解決できない要因が、もうひとつ加わった。

12月11日、気象庁から「ラニーニャ現象が発生している」と速報が出た。詳しいことはよく分からないが、赤道付近の海水温が低下して、日本付近の影響としては西高東低の気圧配置が強まり、この冬は気温が低くなる傾向が予報された。11月に感じた少雨や日照不足も、この現象が原因と書かれてあった。小野湖にはたっぷり水があるが、農園の側を流れる厚東川の支流は12月に入って日に日に水位が下がっている。鶏の飲水の確保、凍結防止の排水などで、これから春先まで「水の心配」が耐えないと腹をくくった。

正常ではない自然現象だが、これは自分の力では、何ともならないことなので「準備する」気持ちを常に怠らないようにするだけしかない。あとは、何とか仕事に差し障りのないよう祈るのみ。

もう一つ「気忙しさ」の要因は自分で解決できること。それは、鶏の産卵時間前倒し。鶏の産卵は、気温にも左右されるが、一番大切にしなければいけないのは「日長時間管理」

明日は「冬至」。暦上、一年で一番日長が短くなる日。朝6時半ごろ、ゆっくりと東の空が明るくなり、夕方4時くらいから西に日が沈みはじめ、5時半ごろにはドップリと暗くなる。

夏の気温の上昇や、冬の厳しい寒さは様々な環境で変化して来るが、地球の回る速度は、今のところ大きく変わっていないと思う。たぶん。

鶏が正常な産卵活動をするには15時間前後の日中の活動が適正とされている。朝、目を覚まして、夕暮れ時に各々が好みの場所につき、羽の下の脇に頭を突っ込んで就寝するまでの時間を担保してやるのが私たちの仕事。

鶏を冬至に向って徐々に早起きさせ、日長が伸びる夏至に向って鶏の活動時間を適正に保ってやることで、産卵率を維持し、日々、お客さまにタマゴをお届けできるよう気を配る。

鶏は15時間の活動中、今の季節だと、起床すると夜の寒さで消費したカロリーを補うべく餌を食べ産卵。日中は日差しを求めながら、体を寄せあって暖をとり、砂浴びをする。時折、小競り合いをしながらも体を動かし、夕暮れ間近になると忙しなく腹を満たして就寝。その営みを繰り返す。

鶏の起床時間は午前3時なので、産卵時間が加速してくると、産卵数は2倍にならないものの、寒い冬、早朝から「辛抱」と「感謝」の採卵作業。この営みが春先まで続く。

自分の力で出来ることには「せっせと務め」。あとのことは、より良いお繰り合わせをいただけるよう「しっかりと祈る」しかない。無事に年内の予定が滞りなく進んでいくようお願いいたします。

あだちまさし。