窮屈な最後の夜

8月、猛暑の生産減少で、予定どおり鶏舎のローテーションが出来ず。老鶏を出荷する目処がなかなか立てられない。

朝夕の涼しさもあり、日増しに生産も上向き、やっと思い描いた状況まで、たどり着いたのが先週。

日長が日増しに短くなる時期は若鶏の産卵率上昇がスローペースなので、これも気がかり。

下関にあった食鳥加工場が廃業してから、久留米か小倉の加工場にお世話になっている。以前は仕事が終わって、下関まで軽トラックで運んでいたが、今は仲介業者や加工場のトラックに回収してもらう。

運搬の手間は減ったが、ロットが大きいので農園の鶏出荷には少々重荷になってきた。

九州までの運転、燃料コストを減らすか、生産効率の悪くなった鶏の飼料代を減らすか、常に神経をすり減らす。

毎日出荷するタマゴを待って下さるお客さまのご予約も穴を空けることは出来ず。

ただ、月末のヒナ受け入れまで、出荷を済ませ、堆肥の搬出、鶏舎の清掃、床の発酵作業、および鶏舎の補修。そのスケジュールを組み立てると今週の出荷が絶対。

9月10日の日曜日。タマゴを触りながら鶏の調子を計る。産卵の増減、各鶏舎のタマゴの艶、若鶏の産卵状況。

見切り発射状態だったが、業者に連絡し、急な出荷の予定をつくってもらった。

私からは来週の出荷を希望したが、先方から「13日の水曜日に近くまで少ロットの回収に行きますので、その便に併せて下さい」と返答あり。

大きなロットを揃えなくても受け取り可能とのことで、夏場の生産落ち込みと出荷の遅れを取り戻すことが出来た。

水曜日は午前中、小野田市内を100件弱配達するので、昨日の夕方、Fさんに休日出勤してもらい、捕鶏作業をして翌朝、出荷する鶏をカゴに詰める。

気温が高い時期に餌と水を切り、狭いカゴに押し込めて時間を置くと、熱中症や脱水症状、ストレスでカゴの中で死鶏が増える。

昨日は朝の予報では「曇り」だったが、午後から日差しがさし、気温もやや上昇。いつもは10羽入れるところを8羽に抑え、少しでも風通しが良いようカゴを平積みして、間隔を開け鶏舎内に。

私たち人間の都合で、窮屈な農園での最後の夜。

心が痛んだが、今朝、一羽も命を落とすことなくトラックに乗った。

命の恵みに直接触れる「商い」をしている。生産効率で命を絶たれる経済動物は決してペットとは違う。

何年も、この営みを続けてきているが、この作業は笑顔が溢れる作業ではない。

ただ、ただ鶏に感謝。

あだちまさし。