佐々並の新米

ごはんが一番美味しい季節到来。

タマゴのお客さま木村さんに先月注文していた佐々並の新米「高食味コシヒカリ」が届いた。

木村さんは月に数回ほど来園され「使いものにするから」とタマゴをお買い上げ下さる。日々、大規模な圃場と向き合っておられるので、季節ごとの農作業の苦労を共感して下さる。

時折、佐々並の「豆腐」や萩で評判店の天ぷらをアツアツで差し入れて「美味しいから食べてみぃさん」と置いて帰られる。

私は作業の手を動かしながら少しの時間、情報交換をさせてもうらうが、この木村さんに好感が持てるのは、農作業の愚痴やボヤキではなく、言葉の端々から、お米への「愛情」や農作業への「情熱」をお察しする。

歳の頃は60代半ばとお見受けするので、夏場、大規模な水田の畔草刈りだけでも相当な肉体労働だろうが、温厚な語り口で「サラッ」と話を切り上げて帰られる。

4月下旬、「そろそろ田植え準備でバタバタしちょる」と言われ、田植えはいつですかと尋ねると「5月あたま」とのこと。

農園周辺の稲作農家さんより10日ほど早く、自宅がある山陽側からすると20日ほど早い。理由を尋ねると「佐々並は日照時間が短いから」

山口県のほぼ中央、中国山地の山々に囲まれた地域なので「なるほど」と納得した。

さらに木村さんが「あまり知られてないけど、食味値は県内でトップなんよぉ」と控えめに話されるので、作業の手を止め「佐々並米」の特徴をじっくり聞かせて頂いた。

蛍やサワガニが水辺に生息し、鮎が清流を泳ぐことはよく知られている。まずは「水」。

あと昼夜の「温度差」。体験したことはないが、昼間に気温が上昇しても、夜には涼しくなる中山間地、特有の温度差。これが美味しい「お米」が出来るミソなんだそう。

稲は昼間の光合成でデンプンを作り、夜間に穂へ蓄えるが、夜の気温が高いと蓄えたデンプンを消費する。登熟期は夜の気温が低いことが重要になる。

傾斜があり、圃場条件としては決して恵まれている地域ではないが、この「温度差」と「水」が昔から良質米を作ってきた。

あとは、生産者の愛情と情熱。その年々の天地の恵み。

5月下旬、田植え作業などをひと段落した木村さんが来園。自家消費用で保冷庫に残しておいた米だけどと前置きし「試しに食べてみぃさん」と5キロほどお裾分け頂いた。

早速、我が家、自慢の「ガス炊飯器」で試食する。炊き上がる時に炊飯器から漂う匂いが食欲をそそる。炊き上がりの、ひと粒、ひと粒の米の艶もキレイ。口に入れた時の甘さというか、美味しさは最高だった。

ただ、私の味覚は、それほど自慢出来るものではないと感じていたので、この味を、如何に人へ伝えるか躊躇してたところ、何も知らずに弁当を持って通学した高校一年生の長女が「今日のごはん!!めっちゃ美味しかったぁ!!」と帰宅する。

「冷めても美味しい」のである。

やはり間違いないと我が心の中で、静かに「ガッツポーズ」をして、木村さんに新米を僅かだが注文したのが先月。

新米が届き、日頃、お世話になっている方に喜んで頂きたいと、佐々並米の説明を添えてお届けした。

自然が豊かな佐々並で、愛情を込め、情熱的に働いた木村さんの「新米」

今年も天地の恵みを受け、最高のお米が出来たことだろうと思う。

お届けした方が「めっちゃ美味しい」の笑顔になってくれると私も嬉しい。

あだちまさし。