昨日、ブリオシュ(La Brioche )のお客さまからHPよりメールを頂いた。
福岡市、大濠公園の入口にあるパン屋さん「La Brioche 」。十数年前の開店以来、農園のタマゴを使っていただいている。
店舗に足を運んだことはないが、オーナーの沖社長は私どもが開園してからのお付き合いで、当初は山口市「サビエル記念聖堂」下にあるホテル「 La Francesca」の総支配人であった。
雨の降る中、傘を差してフランチェスカの駐車場で自ら車の誘導をする姿。厨房で料理のチェックをしながら陣頭指揮をとられる姿に感動を頂き、今も変わらずお引き立て頂いていることに、お客さまのメールから感謝の気持ちを改めて感じた。
ブリオシュのコンセプト「食は生命なり」。ほとんど無休で素材そのものにこだわった自家製パンを提供されている。
随分お会いしてないが沖社長が毎日、真剣に「パンづくり」をされている姿は目に浮かぶ。
昨日、メールの交換をしたブリオシュのお客さまに、以下のメールを返信させていただいた。ちょっと長くて読み苦しいと我ながら感じる。
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昨日はブリオシュさまを通じて、私どものタマゴに関心を寄せていただき心よりお礼申し上げます。
お客さまが贔屓にしていた農場のタマゴに最近、ご不満を感じている旨、何度かメールの交換をさせていただき少し理解できました。
飼育方法、流通形態は養鶏場によって異なりますので、一概に私の考えだけが正しいとは限らないですが箇条書きにて返信させていただきます。
○タマゴの「旬」について
人間と同様、鶏も夏場に体力を消耗し「夏バテ状態」になり産卵が低下します。これはケージ飼いでも平飼いでも同じです。
鶏は人間より体温が高く、汗腺がありません。その上、年中、羽毛布団を身にまとっています。
夏場は飼料の摂取量が減少し、水分をたくさん摂取しながら排泄などで体温を整えるため、割卵した際、黄身に張りがない。白身が流れるという状況が発生すること多いです。
これは私どもに限ったことではありません。見た目や味が少し落ちるかもしれませんが、暑さに耐え、産卵したタマゴは、やはり貴重な命の恵みの食材だとご理解いただけると幸いです。
一方で、これから冬を迎える時期、鶏の飼料摂取量は多くなり、水分の摂取量は少なくなります。
味の数値化をしたことはありませんが、黄身の張りや濃厚卵白の盛り上がりも大きくなり、卵殻は夏場異常に厚くなり、タマゴ自体の「卵重」が増えていきます。
寒の入りから、春分までが滋養の高いタマゴと昔から信じられていることを私も最近知りました。俳句の季語に「寒たまご」とあるようです。
○タマゴの「風味」「匂い」について
私どものお客さまから「タマゴの風味が良い」とか「タマゴの臭みがない」と大変有り難いお言葉をいただきますが、飼育方法や飼料への添加物で、それほど大きな違いが出てくるようには感じません。
声を大きくしてお客さまに説明することはありませんが、とにかく「鮮度」が一番で、生産者が直接、食卓へお届けする「安心感」で満足していただいていると感じています。
初めて来園されるお客さまが「これは今日のタマゴですか?」とか「生で食べても大丈夫か?」と質問されることは多々あるのですが、
あくまで個人的な見解ですが、タマゴの風味や卵黄の濃厚さを、より実感できるのは「半熟」だと思いますので、タマゴかけご飯より、半熟の目玉焼きか、温泉タマゴ、ポーチドエッグで味わってみて下さいとお勧めしてます。
それと、鮮度を試して頂くには「ゆでタマゴ」が一番かもしれません。
タマゴは産卵直後から、卵殻にある「気孔」から水分が蒸発していきます。たまごは「命」の塊で呼吸してますから。
新鮮なタマゴほど、ゆでタマゴを作った際に、殻と白身が引っ付いて「ツルン」と剥けない厄介なことになります。茹でる前に少し手を加えると上手に剥けるのですが、
殻の中にある「命の塊」がパンパンになっている状態で、新鮮なタマゴほど、このような状態になります。タマゴは「鮮度」です。
○殻の浸み、アザについて
殻が赤いタマゴは「殻の赤さ」が大切になってきます。殻にシミがあったとしても中身に問題はありません。
若い鶏でも、時折、卵殻にソバカスがつく場合がありますが、他社の基準は分かりませんが、中身に問題がないしても、私たちの農場では加工を専門とするお客さまへ販売しています。
現在、スーパー等の店頭で「赤玉」「白玉」の価格差はありませんが、以前、「赤玉」が「白玉」より値段が高値だったのは訳があります。
初産は白い鶏、赤い鶏も150日前後からと変わりませんが、産卵ピークを越え、飼料効率が悪くなる時期が白い鶏は700日前後に対して、赤い鶏は450日前後と安定した産卵期間が短いため少し高めの値段設定がされていました。
先に述べました「殻の赤さ」は中身に問題はないのですが、産卵率が落ち、産卵後期に達すると卵殻にソバカスやシミが出来るのが赤鶏の特徴であります。
消費するお客さまは、どうしても先入観が働きますので、栄養上問題ないと、餌や飼育方法を前面に説明する方法もありますが、
実は、適正な時期に鶏を淘汰し、新しい鶏を入れるのが「養鶏の基本」だと、最近、つくづく思います。
お客さまが購入されていたタマゴに、シミやソバカスが多いのであったとしたら、もしかすると鶏の「更新」に少し問題があったのかもしれません。
これは私の想像ですが。
長々と書きましたが、私が伝えたいことは、やはり「鮮度」。その後、「こだわり」。
「食は生命なり」のコンセプトを大事にパン作りをされる La Brioche さまからご縁を頂いたことに感謝いたします。
あだちまさし。