鶏肥ゆる秋

天高く馬肥ゆる秋。ならぬ「鶏肥ゆる秋」。

鶏が、夏場に落とした体力を9月下旬から取り戻し、飼料の摂取量を増やしながら、産卵を続けていく。

日長が短くなる時期、朝の点灯時間を早くしながら、鶏の「産みたい」欲求を切らさないようにするのが、唯一、私たち農園での人工的仕事。

猛暑時期に点灯を早めて産卵を促しても好成績は挙げてくれない。体力が落ちた鶏にとってはストレスにしかならず、様々な問題が発生する。

今の点灯時間は午前3時。目が覚めた鶏が一斉に産卵を始めることはないが、17時すぎから休養をとった鶏の朝の活動は忙しい。

夕方までに首の根元にある「餌袋」がピンポン玉の半球程度になるくらいに餌を詰め込み朝を迎える。

胸骨や尻まわりの肉付きも、日に日に弾力を増し、早朝から忙しなく産卵してくれる。午前9時ごろになると「クゥークゥー」という満足感と産卵を終えた充実感に満たされた鳴き声で農園内は静かになる。

一方、私ども人間にとっては、この時期、布団が恋しい季節となる。

ウツラウツラしながら鶏舎の中の状況を想像すると、4時15分から小刻みに鳴る携帯電話の目覚ましアラームを止めては、浅い夢など見て目が覚める。

満月を追いかけながら農園へ車を飛ばし、夜が明けるのと競争で、産卵ラッシュの鶏舎を回る。

湯気が立つタマゴを急ぎ足で採卵していく時期が到来。

月曜、火曜日はFさんが休みなので、気忙しく採卵するが、少しメモを取りながら鶏舎を回る。

採卵の順序を毎週、訂正しながら、出来るだけロスがないように。

「鶏肥ゆる秋」。

これから春先まで正念場の朝仕事になってくるが、タマゴが届くのを待って下さるお客さまがあっての仕事。

出来るだけ不平、不満を持たずに、この時期を通過していきたい。

あだちまさし。