六さん ８月３０日しんあい農園日記

昨夜は涙が出た。ＮＨＫ９時１５分から「ムツばあさんの花畑」を観た。老人が数えるほど身を寄せ合うように暮らす過疎の山奥。休みのない農業。儲からない農業に連綿と営みが続いたこの地域も廃屋が連なり、誰ひとりの後継者がいない。

ムツばあさん夫婦（７０歳後半）は守り続けてきた畑に桜や紫陽花の苗を植え始めた。いつか人が訪れたとき四季の花が心を和ませるだろう。そんな願いで痛い足を動かし、曲がった腰で苗を植え続けておられた。オゾン層破壊。食品公害。ゴミ問題あらゆる事柄に「どうせ先のこと」と背を向けて今を楽しく生きるのではなく。後に続く者に心を寄せて今を生きておられる。

この老夫婦には植えた木々が満開の花を見ることはないかも知れない。けれど山を花でいっぱいにしょうという心がすばらしい。山で生きた人は何代も前の祖先が植えた木を切り生きていき、自分も子供のその子供を思うて木を植える。そんな時間の感覚を生きた人だからできる花畑。夫を失い独居生活をする老婆に「来い」という長男「このイモを掘り終えたら」 と言いながら少ないイモを掘りきらない老婆。じいちゃんと暮らしたここに居たい。便利、快適そんな尺度ではない尺度がある。

とにかく涙がとまらなかった。で、ワインをほぼ一本飲みほしていた。気がついたら朝３時。ザアザアいうテレビと、わたしに追いやられて部屋の隅で寝ている犬。飲み過ぎでのどが渇いてやれんかった。机の角で頭をしこたま打って目が覚めた。にわか農業者はこの程度である。

台風到来。とにかく雨がほしい。

02/08/30(金) 18:26 六さん(JAG07563)