六さん 4月　1日しんあい農園日記

「貸し切り」の看板が、ひさご庵に掲げてあったけれど、磯村千代子先生とわたしに笑顔で久子さん親子は迎えてくれた「６時半から宴会です。そばはできます」うまいそばを食べながら１時間、磯村先生（７７歳）の話しに涙がこぼれた。

あれは３１歳で阿知須小学校に赴任して一年生を担任したときじゃった。知的に障害があるゆきちゃんがクラスにきた。先生も親も友達も、呼ぶときは「あーちゃん」。この子と２年取り組んで教育が面白いと思ったんよ。一年生は午前で授業が終わるが、ゆきちゃんには弁当を持たせて午後から文字を教えた。例えばリンゴの「り」を教えるときは、リンゴを転がしたり、食べたりして「りんごの、り」と教える。その教え方が面白いので、クラスのみんなが午後から残りいっしょに文字を教える「先生の教え方とりワシのほうが上手」というぐあいに。生徒が生徒を教えるという雰囲気がうまれた。

ある雨の日、クラスの男子が「先生！ゆきちゃんがいじめられている！」と職員室に駆け込んだ。他のクラスの男子生徒が、井関川にゆきちゃんのカバンや傘を 投げ込んでいた。ゆきちゃんは流れていくのを見て大喜びしていた。７〜８人の男子を土手に並ばせて力いっぱいビンタをしたんよ。雨にうたれながら川にはいりカバン、傘に靴を拾い上げ、まだ喜んでいるゆきちゃんをちからいっぱい抱きしめて泣いた。２年間でひらがなは覚えた。あれがあったから教師ができたいね。

岐波駅の前で「ああ、きょうはひさしぶりにえかった。少しは歩いたほうがいいからここでええ」とわたしの手を握りしめて車を降りられた。

03/04/01(火) 18:51 足立　進(JAG07563)