六さん 7月12日しんあい農園日記
市場で魚をみわける眼力なら健ちゃんに教えてもらえ。松村御大がわたしの客人で飲食関係の方に短い言葉で言うた。その荒川さんときのうは一日過ごさせていただき消化しきれないほど教えていただいた。
早朝、店の周囲をお掃除しておられる。そのことを話題にしたら「少しですが仲間ができました」と嬉しそうである。飲食街ですからゲロなんかもあるでしょう、と生々しいことを聞くと「あります。少しの量は鳥が処理しますが、たくさんのモノは掃除します」。出発前にもお店の近くにあったゴミを集積場のネットに入れられた。
杵築の酢屋の坂道でも、落ちている吸殻を拾いながら風景を楽しまれる。その吸殻はズボンのポケットにおさまるのである。月に一度の掃除に参加することで、それが毎日の習慣になっておられる。
会席料理と懐石料理のちがいや、器と料理のバランス、和食は包丁で「切る」というところから一番大切で、刺身を「ひく」のは上達してからさせていただく技である、など聞けばいくらでも具体的な答えがでてくる。
しかし、それをふだんは出されず、吸取紙のように人の話を目をほそめて聞いておられる。わたしなどは、少しの知識をいかに誇大に吹聴するかに気持ちがむいている。健ちゃんは謙虚である。謙虚な生き方のほうがたくさん教えてもらえる。
嵐山で豆腐料理を食べたとき、その値段の高さと、満腹にならないことに不満だった。健ちゃんは言う。「庭の手入れをこまめにするだけでもすごい費用なんですよ」。庭を愛でる力量がなく胃袋だけで食事の価値を判断したわたしだった。価格競争で、器、庭、お給仕などに力を入れることが難しくなり、いい文化が失われていきますねと。
長旅の疲れは感じなかったが、選挙速報で寝不足だった。8時前、夕陽をみながら鶏舎の戸を閉めて歩きながら、朝の市場から、いまはカウンターの前で寿司を握っておられるだろう健ちゃんや、新入社員で、ビヤホールでイカ焼きに奮闘しておられるという岡本さんのことをおもった。明日も頑張ろうで。
04/07/12(月) 20:24 足立 進(JAG07563)
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