六さん　平成17年3月21日　しんあい農園日記

気になることがある。きのう朝6時半過ぎに鶏舎に聞こえる犬の声で来園者を察知した。誰も応対する者もいないのでそのうち帰るだろうと採卵をしていたけれど犬は鳴きやまない。手をとめて作業場に行くとおばあさんが「ここは何羽の鶏がおるかね」と聞く。この会話につきあっておれば配達も発送にも遅れが出るとおもい「9時過ぎてから来てくれんかね」と言い残して採卵を続行した。

けれども犬は吠え続ける。もういちどおばあさんのところに行ったら「タマゴを売ってくれんかね」と言う。とうとう「今が一番忙しい時間じゃから帰ってくれんかね」荒い言葉で促した。おばあさんは農園を出て行った。そのぐらい朝の時間はわたしには貴重ではあるけれど、もっとやわらかく伝える言葉はなかったのか。

山口朝日放送の中村記者から「山口新聞エッセイを読みました！」とメールをいただいた。記事を書くことが仕事の中村さんから「ほんとうすばらしいエッセイです」と持ち上げてもいただいた。わたしは、杉本から依頼されたことを短時間でやり終えた。たとえば3日あとに、というように時間の余裕をとったとしても、原稿に向かう時間は同じだったと思う。今回は短時間、しかも配達で疲れ切って、早く寝たいのを辛抱しながら「やる」と決めたとき、農園生活のなかで一番わたしを支えてくれたシーンを思い出し、それを1000文字という制約のなかであらわせた。それが、よかったと思っている。わたしの性格は短期集中決戦型で、その性格を自覚していたからやれたと思う。

05/03/21(日) 21:22 足立　進(JAG07563)