六さん　平成17年4月30日　しんあい農園日記

美祢から農園までの最短は「藤ヶ瀬峠」になる。夜ここを走るとイタチ・テン・猪・タヌキかキツネそんな動物にであえる場所でもある。

午後一時過ぎ配達から戻るとき犬が出た。中型の黒い犬で首輪はしていたけれど、痩せおとろえて腰の骨まで見えた。車を停めてエンジンをきり降りた。ヨタヨタと尾をまいて逃げて間隔をとって振り向き座った。わたしが近寄れば、そのぶんだけ後退して間合いをとる。迷った猟犬かもしれない。

捕まえれば鑑札で飼い主がわかるだろうと10分ほど時間をかけたけれど捕まえることは無理だと判断した。「なにか食べものはないか」考えたら、夕食用に山口のスーパーで買った肉と野菜に揚げ出汁豆腐がクーラーにある。4個158円の豆腐を草むらにおいて少し車を移動したら食べた。

20代のとき、会社の事務員さんから「犬をもらってくれませんか」と頼まれ庭で飼うことにした。いまおもえば紀州犬の雑種だったと思う。大きな身体になり鎖や首輪を何度も切ったほどの力があった「シロ」という。ある夜、酔ってタクシーで帰ったわたしはシロを小屋から引き出して小屋に入ろうとした。そのとき手首を噛まれた。酔いは吹き飛び餌入れでシロの頭をしこたま叩いてはずした。

すぐに病院に行きおおきな傷口は消毒ですんだ。わたしが悪いのに、飼い主を噛んだという理由で車に積んで田舎の山に捨てた。30年たったいまでもルームミラーにうつったシロはわたしのおおきな十字架である。

05/04/30(土) 20:29 足立　進(JAG07563)