先週からボツボツ春の足音を感じるようになった。
この冬は異常気象を感じることが多かった。とにかく寒い、加えて日照不足に水不足。
なかなか生産が上向きに転ずることなくズルズルと時が流れる。
2月7日までは「徹底的な寒さ」。日中も0度以上に気温が上がらず鶏の飲水を凍結させないよう神経が張り詰める。
翌8日、予想気温を大きく下回る「容赦ない朝の冷え込み」。最低気温−8.3℃。凍結防止虚しく、ほとんどの鶏舎の送水管が凍結し、多くの破損事故が起きる。
焦る気持ちをおさえ、Fさんと二人で修理してまわったが、翌日、修理の不備が少しあり手直し。
私は何度も経験したが、さすがにFさんの「ガラスのハート」は、この事態を受け入れるのに時間がかかる。
凍結した送水管が緩んでくるのは気温が1℃くらいに上がってから、日当たりの良い場所から氷が融け始める。
細い送水管の中で融けはじめた氷が膨張し、この「氷のコブ」の行き場がなくなり、塩ビに亀裂が入り水漏れが発生するのである。
凍結防止の排水をしているので亀裂は小さく、水漏れが始まらないと目視で確認するのは難しい。
水の逃げ場所を確保するために排水蛇口をぬるま湯で最大に緩めて、気温上昇の予報を確認しながら、出来る仕事は前倒しに進める。
修理道具を用意し、昼前ごろから破損状況の見回り。氷が緩んだ飲水口「ニップル」から、喉がカラカラに渇いた鶏が一斉に集中するので、それを掻き分けながらニップル以外の箇所から水が出ていないか確認。
亀裂から漏れる水にも鶏が口を開け、舌を這わせながら殺到する。
その亀裂の幅をチェックして周り、被害の確認をしたところで鶏には申し訳ないが、一旦、全部の鶏舎へ流れる始水栓を止め、被害の大きい場所から優先的に保全工事をする。
作業を手伝うFさんには伝えなかったが、2月8日の破損事故は農園はじまって以来、最大級の事故で確保していた保全材料も底を尽きた。
2日かかりで保全作業をしたが、どうしても目視で確認できない亀裂が2箇所残った。
日中は鶏の飲水活動で漏れることがないが、夜中にジワッと滲んだ水が僅かに床に漏れ小さな水溜りができる。
当てずっぽうに切断作業は出来ず、鶏に「しばらく動くな」と言っても聞く耳はなし。
今日のひとり採卵作業で原因の箇所を突き止め、忙しかったが夜中に僅かに漏れていただろう箇所を保全作業。
おそらく、これで作業完了。となってほしい。
厳しい寒さが続き、辛い作業が続いた。私にも堪えたが、とりわけFさんの「ガラスのハート」がズタズタになった。
しかし、この経験が自分にとって「大きな収穫」だったと前向きに受け取れるよう彼へのフォローは大事であろう。
この冬の経験で、私も少しだけ辛抱強くなった気がする。
あだちまさし。