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しなやかに

梅雨があけました。今月初旬の豪雨がうそのような猛暑日で「災害級の暑さ」という表現に、心が折れそうになります。

六月から七月に日付が変わる夜、県内のあちこちで線状降水帯が発生して、記録的な雨量を計測しました。ちょうど、周南市方面への配達と重なりましたので、水しぶきで息がつまるほどの大雨が降りしきる中、夜通しハンドルを握って帰路につきました。

道中のどこかで車のフロントカバーが吹き飛ばされているのを、ずいぶん後になって気づきました。「命さながら」と表現しても、決して大袈裟ではないような気がしています。

道路が冠水する直前の危ない場面に何度も遭遇しましたが、夜明け前に農園へ到着して初めて見る川の水量に愕然としました。ゴウゴウと音を立てる濁流に「木ノ瀬橋」の手前が浸水して、橋を車で渡ることができません。一段高い所にある農舎や鶏舎は無事でしたが、日頃は車で走る河川の管理道が一時的に冠水しました。

隣人のマコトさんによると、厚東川の護岸が完成して以来の増水ということで、昭和五十年あたりから護岸工事が始まっていますので、四十数年ぶりの水量だったのではないかと思います。十五年くらい前の豪雨で吉部のあちこちに床上浸水の被害がありましたので、支流が合流する部分の川幅の拡張工事がされていましたが、今回の記録的な雨量で残念ながら数軒が再度被災され、心が押しつぶされるようでした。

農園では、大雨の影響を受けながらも最低限の日常業務は支障なく終えることができたのですが、これほどまでの自然災害を目の当たりにすると「不幸中の幸い」的な言葉を使うのは何か不謹慎のような気もしています。各地で頻発する豪雨被害にも多く触れ、無事の安堵を確認し、励まし合うのが精一杯といった心境です。

人ごとには出来ない大きな自然の力にふれ、心を折ることなく、しなやかな心持ちで日常の仕事が続けられたことが少しの収穫でした。目には見えない心の筋力は幾分か強くなったように感じています。

2023.7.26 あだちまさし