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雨あがる

国連の『気候変動に関する政府間パネル』という組織。自分には縁遠く感じていたが、最新の報告書で、大雨、干ばつといった気象の極端現象は、温暖化と密接に関係していることを改めて強調した。〈温暖化が進めば降水量や乾燥現象の厳しさを、さらに強めると警告する〉との記事が目に留まった。

まさに、それに符合する今月の悪天候。先月からの高温から始まり、想定外の進路で台風9号が接近し、その後は十日間ほど大雨をともなった不安定な天候。宇部市防災課から携帯に入るメールを読み返すと、熱中症警戒アラート、避難勧告、大雨・洪水や土砂災害の警報の数々、あと時々刻々とコロナ感染者数の報告。受信ボックスに残るのは楽観できない事案ばかりである。

農園では高温による体調不良で鶏が低空飛行を続けていたが、大雨の前、一気に想定の限度いっぱいまで産卵率が下がった。情緒的とはいえない降雨のなか、大量の冷や汗をかきながらの気の抜けない日々を過ごした。幸い盆明けあたりから回復の兆しがあり、天候の回復とともに安堵で胸を撫でおろしている。

飼料メーカーや同業者の知人に状況を訊ねると、どこも同じ時期から体調不良を起こし「これまで経験したことがない下落幅」と口を揃えた。県内の畜産では牛の乳量が最も下がっているとのことだった。ビタミンを増量添加する方法もあったが、自分の体に置き換えて考えてみても、真夏の体が弱っている状態で豪華なご馳走はあまり効果がない。きっと鶏もそうだろうと感じ、気温の低下を辛抱強く待つしかなかった。

今年の梅雨は降雨が少なく、朝夕の涼しさも手伝って、比較的順調に産卵を続けていた。近隣の農家さんも、長雨前までは作物の生育がすこぶる良いと聞いていたので、「季節のわりに順調すぎた」、つまり「産み疲れ」と夏バテが重なっておきた大幅下落だったのではないだろうか。帳尻合わせをしたと思って、気持ちを切り替えていかなければならない。

農家さんと同じく、私たちも命を育む仕事である。厳しい気象条件のなかでも天地の恵みに感謝できる心の「しなやかさ」は失いたくないものである。

2021.8.28 あだちまさし