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台風十四号

九月十七日からの三連休を直撃した「台風十四号」が通過した。
翌日の地元紙には「大きな被害なし」と書かれていたが、農園の周辺では、収穫前の稲穂が悲しそうにグッタリ倒れている光景が散見される。被害を受けた水田は幾分かの補償があるようだが、行政の調査を順次済ませてからのこと。一週間後の今日、大雨に打たれる稲穂を見て、胸が痛んだ。

台風が接近する日曜日の午前中まで堆肥の搬出が慌しかった。今月は、稲刈りを控えた農家さんや、それに伴うライスセンターが繁忙期。加えて、お茶農家さんも茶葉の収穫が忙しいとのことで、受け取り農家さんを探すのに苦労した。幸い「有帆朝市会」の農家さんが二件、それと、ひと山向こう隣りの農業委員さんが汗を流して下さったおかげで、概ね予定どおりの出荷ができ安堵している。

農家さんと予定の擦り合わせでは、それぞれの抱える現状を聞かせていただき、農家の高齢化や担い手不足、土づくりに関する考え方の違いなど、その都度、深刻な壁にぶつかる。行政が掲げる目標と現実とのギャップは大きく不安は感じるが、来園され一緒に汗を流して下さる農家さんには暗さはない。年齢を重ねて生き生きと働かれる姿に刺激を受け、長年、自然に寄り添いながら辛抱で磨かれた「感性」には、心を洗われるような学びがある。

特に、今月は受け取り手が見つからず、数人の農家さんと貴重な意見交換ができたのが収穫だった。なかでも、近隣で重労働を緩和するために、堆肥を頒布する機械を導入する予定があることがわかり、ひとつ課題が解消できそうで嬉しかった。

台風一過の翌日。川向うの細く暗い県道に、強風で道幅いっぱいに落ちた枝を拾い集める隣人のマコトさんの姿があった。日頃道路を通行するのは、私も含めて、ごくわずか。歩いて通行するのは農園に通っている聴覚障害がある女性のみである。

小枝とはいえ、道路一面を埋め尽くす台風の副産物を、腰をおり汗を流して拾い集めるのは重労働であるが、公益を自分のこととして自然に取り組まれる「感性」が尊い。緑豊かな田園に吹く風、川を舞うホタルや、畔を彩る彼岸花も、こうした無償の働きが生み出す農産物なのだと、しみじみ思う。

2022.09.27 あだちまさし