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寒たまご

寒晴。天気が良いと空がとても青く、そして深く見えた。

昨夜は大きな満月で穏やかに晴れた。暖冬とはいえ、今は寒中。今朝の気温-1℃。地表の温度は更に下がり真っ白な霜に覆われた。足の裏から体温が奪われ、ジンジンと手の指先が冷える。

寒さが厳しく春に向う時期は早朝から鶏の産卵が活発だが、追われるように採卵をすすめる手が冷えて動かず思うように仕事がはかどらない。やり場のない寒さに耐えかねて、すぐそばの鶏を抱き寄せ、羽根の下に両手を入れて鶏の体温で指先をほぐす。

鶏の脇の温もりで次第に感覚を取り戻す指の先に鶏の小さな鼓動を感じると、寒さと忙しさで押し潰されそうだった心にも、鶏の恩恵に感謝する気持ちも取り戻しながら、寒中の朝、採卵作業を続ける。

小寒から立春の前日までに産まれた卵を「寒たまご」といい、昔は鶏が寒さに耐えて産み落とす卵が滋養に富んでいると喜ばれ、特に大寒の朝に産まれた卵を食べると無病息災で一年間、過ごせると珍重されたようだ。最近では、風水占いで運気が上がり、金運にも恵まれると宣伝されることもあって、私たちの農園にも早くから予約注文をいただく。

日々、鶏の息づかいを肌で感じると、寒たまごが滋養に富んでいるというのはよく理解できる。卵の中身もグッと引き締まり、濃厚卵白の盛り上がりと、黄身の張りや弾力も増すので、味わいもより一層、濃厚に感じることができる。今が「タマゴの旬」なのである。

金運に恵まれるかは定かではないが、生産者である私たちにとって、寒さに耐えながら変わらず恩恵を与えてくれる鶏たちへの感謝を絶えず忘れないことが、案外、運気を上げる近道かもしれないと感じる。

2019.01.23 あだちまさし。