月別アーカイブ: 2018年5月

ちいさな自信

今朝、予定通りヒナが届き、飲水器の取替え作業を済ませた鶏舎に新しい群を入れた。

鶏舎への止水栓の取替え、10メートルの配管をL字状に壁沿って固定及び、排水口の取替え。

床への水漏れ防止に雨どいを配水管の下へ取り付けて、配管の上には鶏が上がらないような細工をする。

はじめて自分たちの手で、業者に依頼ぜず取り替えたのが3月末。今回が2回目の作業になる。

残り10鶏舎は取り替えなくてはいけないので、順番に進めていくと来年までかかるだろう。

目的は経費の削減と水漏れ事故防止。

自分の手で市販される材料を加工し取り替えることでのコストカット。事故防止については、今まで水漏れ事故で床が水浸しになった経験を踏まえた上で細工を施した。

まだまだ改善の余地はありそうだが、前回より作業時間は格段に早くなり、先が見えない作業の見通しが少しつかめた。

今回もFさんと一緒に進める作業。7割を二人で、残りの詰めは私が担当した。

経費削減、事故防止に加え、私の願いは一緒に作業をするFさんに「達成感」を味わってもらい、仕事に対する自信をつけて欲しかった。

焦る気持ちを抑えながら、私は助手に徹し、今、考えられること、出来ることは全て彼に任せながら作業を進める。

昨日は日没まで完成した配管を確認した。ひとりで終えた仕事以上に神経を使い確認作業をし、一晩、水圧がかかった状態で水漏れがないか早朝から再度確認。

そのことを悟られないよう、出勤してきた彼に確認作業をお願いする。

かなり入念に時間をかけて確認作業をした彼が「いまのところ完璧です」と気持ち良く報告してくれた。

彼の表情が明るかったので、私の心も晴れた。

達成感を感じてくれたか分からないが、多少の自信はつけてくれたと思う。

この作業を通じて生まれた芽を枯らさないよう自発的協力関係を育てていきたい。

遠回りで歩みが遅いかもしれないが、きっとお互いの力になると信じて。

あだちまさし。

梅雨入り

今朝、ひとりで採卵中にタマゴを落とした。

ひとトレー30個が勢いよく割れた。はじめてのことではないが、よくあることでもない。

汗がにじむほど体を動かしていたので気を抜いていたわけではなかったので、トレーを落とした自分が一番驚いた。

先週の中ごろ、遠くで暮らす知人が施設に入所したと知った。知人とはご高齢になられた恩師のことだ。

私に出来ることはなさそうだが、何とか面会に行く時間がとれないか、そんなことを数日考え続けていた。

お会いしたら何を話そうか。どんな話を喜ばれるか。何か食べたい物はあるだろうか。

あれこれと想いをめぐらせてはみたが、目の前の仕事と予定を見比べると時間をつくる余裕などなく数日かけて諦めた。

今まで離れていた時間を巻き戻すことはできないし、恩師が年老いて時間を止めることもできない。

わずかな時間をつくることができない自分の不甲斐無さに気持ちの折り合いをつけるのにも時間がかかった。

足元に落ちて割れたタマゴを見ながら、そんな思いも重なって心が締め付けられた。

夕方、防災から「梅雨入り」のメールが入る。

今日は雨の予報だったが、にわか雨。仕事に差し支えなかったことだけが有り難かった。

あだちまさし。

明日はシトシト

明日は終日シトシト雨になりそう。

近隣の水田では田植え準備のトラクターが忙しく働いていた。今週末が田植えのピークになりそうだ。

農園でも明日に備えてIさんに給餌の指示をメモして渡す。

「明日の雨は9時からお昼までがピークになりそうです。鶏舎の餌を切らさないようお願いします」

あとは「自分で考えて」というような彼女任せの簡単な指示をして、終日、自分の作業をすすめた。

昨日、彼女はバナナを2房抱えて出勤。一房が10本ほどある重そうなバナナを大事そうに持ってきた。

毎年楽しみにしている地域の祭りがあったようで「バナナの叩き売り」で買ったそうだ。ひと房500円だったと教えてくれた。

同じ聴覚障害がある兄も楽しみにしている様子で、彼は神輿を担いで祭りを盛り上げるのが恒例行事。

バナナの叩き売りがどんなものか私は見たことがないが、これを家族4人で楽しんでいるに違いない。

そんな光景を想像しただけで、何か私まで面白く、愉快な気持ちになる。

今朝、ありがたくバナナを食べようとしたところ、下側が黒くなり傷みかけているのに気がついた。

祭りから自宅へ持ち帰り、それを翌日、バスに乗ってわざわざ持参してくれたので無理もない。おまけに昨日も一昨日も良い天気だった。

夕食後、ミキサーでバナナジュースにして家族て無駄なく美味しくいただいた。

彼女がみんなを想って買ってきたバナナは格別な味でありがたかった。

あだちまさし。

たまご焼き弁当

12時45分。下松市「花岡八幡宮」で昼食。

金曜日は山口市から光市までのお得意さまへタマゴをお届けして、ここで一旦エンジンをとめる。だいたい今日も定刻どおり。

石段坂の参道の先には鎮守の森に囲まれたお宮が見えるが、私は正面の鳥居を右に曲がり車参道から参拝口近くの駐車場まで上がる。

疲労と空腹で頭が真っ白だが、歴史的にも由諸ある本殿で二つ拍手して拝礼を済ませて、左後方にある「願かけの御神馬」の顔を撫で、お手洗いを借用し一息つくのが最近の日課。

駐車場の側には、室町中期に建立された立派な多宝塔があり、その横には吉田松陰先生の坐像と辞世の句が二句添えられているが、このあたりは省いて弁当のフタを開ける。

弁当箱は手のひらサイズの黄色い2段式。子どもたち3人が保育園で使っていたものでフタのキャラクターは使い込んで擦れてしまった。

箸を握りながら一瞬だけ感慨のようなものが頭の中を過ぎるが、何しろ空腹なので一心不乱に飯を口に運ぶ。

朝が早い日は前日の夜におかず等を用意してもらい、出掛ける前に弁当箱へ自分で詰める。

上の段には白飯をサクッと入れ、真ん中に梅干をギュッと押し込む。下の段はおかず。今日はニンジンサラダ、ほうれん草のごま和え、ひじき煮、あと定番の「たまご焼き」。

それぞれを口に運びながら、真っ白だった頭の中が次第に活力を取り戻してくるのがわかる。これが金曜日のリフレッシュタイム。

今の仕事をはじめて、慌しく毎日を送っているようだが、自分自身が生産者となって初めて得る知識というのがたくさんある。

農園の営みを通じて様々な農家さんとご縁もいただき、お米や野菜などを生産する苦労にも知らず知らずのうちに触れてきた。

日頃、自分が口にしているものを生産者が作るには、どれほどの手間や知識、そしてお金が必要か。

そのことを理解して食物と向きあえるということは、今までの人生とくらべてグンと豊かなものかもしれない。きっとそうだ。

白飯とたまご焼きを頬張りながら「悪くない」とボンヤリ考えたりする。

あだちまさし。

ホオズキを食べた

「食用ホオズキ」の最後の一粒を名残惜しくほおばった。

沖縄県読谷村在住の同級生「ジュンコちゃん」がおみやげに持参してくれた珍しい代物である。

沖縄では道の駅で手ごろな価格で購入できるらしく生まれて初めて「ホオズキ」を口にした。

観賞用と違い殻がカサカサして、中にあるオレンジ色の果実を食用とする。大きさは丁度プチトマトほど、味も食感もトマトに似て酸味があり甘酸っぱい。

トマトとの大きな違いは「香り」。口に入れた時に優しい香りに包まれるのだ。味も香りも美味で癖になる。

ジュンコちゃんは6歳と3歳の二児の母親。ご主人は陶芸家のタマゴ。

大学時代、ワーキングホリデーで多くの国を渡り歩いて、日本の素晴らしさを再認識したという。そんな彼女が行き着いた先が沖縄の読谷村。

中学時代は親しくなかったが、スマホが普及する10年ほど前にSMSが同級生の間で流行り、それを通じて再開した。

年に数回帰省した際には、タマゴを買いに我が家を訪れて「ゆいまーるな風」と珍しいおみやげを持参してくれる。

食に深い関心があるようで、読谷村のおばぁの豆知識などをおみやげに添えてくれるのが嬉しい。

今回は急な連絡で会うことは出来なかったが、ホオズキのお礼に阿知須特産「くりまさるのピクルス」をあげた。

ジュンコちゃんが運んでくれる風に触れる度、いつか夫婦で読谷村へ孝行旅行に行きたいと夢が膨らむ。

あだちまさし。

豊かな森の恵みを守るには

ここ1週間くらいイノシシが鶏舎の周りを荒らしていない。

この間の鶏舎周辺の変化を思い返してみると、多少思いあたることもあるが、勝手な先入観で理解すると後で落胆するので今後も気長に観察したい。

昨年、イノシシが頻繁に出没するようになって、地元の方を中心に駆除や防獣の相談にあちこち足を運んだ。

駆除に関しては、従来お願いしていた猟師さんから、更に近所の猟師さんにバトンタッチしてもらい、今年に入って1頭捕獲できた。

捕獲できた頭数が多いか少ないかは別にして、今回から役所の駆除係にも相談できるようになったので一歩前進といったところだと感じる。

駆除や防獣の相談をしていくなか、小野の炭焼きさんから「森林の保全」について興味深い話を聞き大変勉強になった。

どれも短期間で結果が出るものではないが、先を見据えて取り組むべき大事なことだろう。

一週間前、この事に関する記事が掲載してあったので、指の運動も兼ねて備忘録とする。

あだちまさし。

2018.05.04 毎日新聞 社説 「みどりの日に考える 豊かな森の恵みを守るには」

群馬県みなかみ町の利根川源流域に「赤谷の森」呼ばれる面積約1万?の国有林がある。
林野庁と日本自然保護協会、地域の住民団体の3者が協働し、生物多様性の回復と持続可能な地域づくりに挑戦中だ。

その一環として、3000?ある人工林のうち、林道から遠いなど木材生産に適さない2000?を自然林に戻す取り組みが進む。

2015年と17年には、森に生息する絶滅危惧種のイヌワシの餌場にするため、スギの人工林計約3?を皆伐した。
伐採地は再植林せず、自然林に戻るのを待つことにした。

伐採地には狙い通り、ノウサギなどイヌワシの獲物が顔を出すようになった。
ミズナラなど地域本来の広葉樹の稚樹も生え始めている。

林業に向かない他の人工林も、間伐して広葉樹が入り込みやすい環境をつくるなどして、徐々に自然林に近づけていく計画だ。

(人工林を自然林に戻す)

木材の生産を前提に植林された人工林は、成長の過程で間伐などの適切な維持管理が欠かせない。

一方、地域本来の自然林が再生すれば生態系の回復につながり、間伐などをせずとも治山や水源涵養などの公益的機能も保てる。
今後の森林整備の一つのあり方だろう。

日本は国土面積の約3分の2(2500万?)を森林が占める。

ところが、1950年代半ばからの拡大造林政策で造られた私有人工林を中心に荒廃が懸念されている。

拡大造林では建材用などとしてスギやヒノキなどの針葉樹を植えた。
たが、木材の輸入自由化などの影響で国産材の価格や需要は低迷し、伐採期を迎えても手入れが行き届かないままの人工林が多い。
これでは公益的機能の発揮もおぼつかない。

そんな現状を踏まえ、政府が今国会で成立を目指しているのが、森林経営管理法案だ。

同法案は、森林の所有者に森林を育て、伐採し、造林する経営管理の責務があることを明記した。
所有者が適切に管理できていない森林は、一定の手続きを経て、所在地の市町村に経営管理を設定する。

林野庁によれば、経営管理権の設定が必要な私有人工林は400万?を超えるとみられているという。

このうち林業経営が成り立つとみられる私有林については、市町村が「意欲と能力のある林業経営者」に経営管理を委託する。
それ以外の私有林は市町村の管理下におき、将来的には自然林に戻していく。

市町村が管理する私有林の費用については、24年度から一人当たり1000円を住民税に上乗せして徴収する予定の森林環境税をあてる。

森林の公益的機能を考慮すれば、林業経営に適さない私有林の管理を市町村に委ねるという方向性は理解できる。
だが、課題は多い。

森林問題に熱心な市町村は多くない。
総務省の調査では、林業専従職員が不在か1人の市町村が全体の3分の2を占める。
実際の管理作業は森林組合などに委託することになるだろうが、林業従事者数は全国で5万人を割り、減少傾向が続く。

森林環境税の税収は年間620億円に上る。森林管理以外の使途について、国民的な議論が欠かせない。
多くの府県が森林整備などのための地方税を独自に課しており、役割分担を明確にする必要もある。

(川と海も一体で再生を)

こうした点を踏まえれば、森から発した川が海へと続くように、流域の自治体が連携して新税を有効活用し、森林再生に取り組むべきだ。

相互交流により、森林の重要性の理解が深まるし、山間部の自治体の人員不足を補う効果も期待できる。

宮城県気仙沼市でカキの養殖業を営む畠山重篤さんらは、気仙沼湾に注ぐ川の上流部でミズナラやブナなどの植樹を続けている。
鉄分を含む森林土壌の養分が川から海に運ばれ、植物プランクトンを増やし豊かな漁場を育むと考えられている。

「森は海の恋人」が合言葉の取り組みは今年で30周年。
東日本大震災で気仙沼の養殖業は大きな被害を受けたが、森の力のおかげもあり、よみがえることができたという。

さまざまな公益的機能を持つ日本の森林は、国民の共有財産だ。
豊かな森の恵みを守るには、その多面的な価値を再認識し、木材としての利用にばかりに偏らずに保全、活用を図っていかなければならない。

今日はみどりの日。
50年、100年先を見すえた森林政策が、今こそ求められている。

日本農業新聞

一昨日、美祢のM老人来園。月に数回タマゴをまとめて購入されるお客さま。

ご近所に、ゲートボールの友達にとタマゴを配って下さる有り難いお客さまで、来園される際には自家製の野菜と鶏舎の清掃に使う古新聞を持参される。

その古新聞が一般紙と「日本農業新聞」。農業新聞は我が家でも以前、定期購読していたが随分前に辞めた。

毎日届く時は、それほど熱心に目を通さなかったが、M老人が持参される古新聞は、いつもパラパラと目を通す。

一昨日も気になる見出し記事があり、農園でパラパラしたかったが、時間がなく自宅まで持ち帰ることにした。

せっかく持ち帰るので4月26日から5月4日をまとめて。

耳から仕入れて頭にストックしていた情報が、実際に読み込んで理解を深めることができた。

記事は切り抜きせず、気になる単語や文を手帳に書き出し、あとは必要な時にネットで検索したり、知人に尋ねたりしてみようと思う。

記事以外に、読者の投稿欄、書籍の紹介も意外に新鮮だった。

いつも購読している一般紙も日曜日には書籍の紹介があり、本屋に立ち寄る時間がないので楽しみにしているが、

農業新聞の週末に紹介される書籍は興味深いものが多かった。

3日かけて古新聞に隅々まで目を通したのち、倉庫の古新聞の定位置に保管。

定期購読している時は、これほど新聞に手垢をつけることはなかったと思うが、昨日から降り続く雨のおかげで手帳に貴重なメモがたくさん出来た。

満足した雨仕事。

あだちまさし。

若葉が茂る季節の雨

連休明け。野にも山にも若葉が茂る季節の雨。昨日から思いのほかよく降った。

連休中、通常の仕事に加えて鶏の出荷作業をした。3日の祝日に九州から業者を手配し出荷。

粘り強く交渉して処理の空きが出来たのが3日しかなく、ある程度の予想はしていたが体に少し疲れが残る。

朝から肩、腰、膝が重く痛い。

週3日の選別パートさん。月曜から水曜日まで3時間ほど選別の手伝いをしてもらう。

年齢も60半ばに差し掛かり、稲作と農園での作業の掛け持ちがお体には堪える時期に差し掛かっていると常々感じている。

例年5月の連休あたりから苗箱の準備をはじめられるので、月曜日の仕事効率が多少下がり気味だが口には出さない。

一緒に仕事をはじめて長くなるので、自分で目標を立てて選別作業をされている姿は私が一番よく知っている。

私は朝6時から採卵し作業場へタマゴを運ぶ、9時に選別パートさんが出勤し、10時ころから作業場に加わり選別とパック詰め。

農繁期を迎える時期の月曜日は朝の挨拶を済ませて、作業の手を動かしながら少し長めの「言葉のキャッチボール」をしながら作業のペースを上げていく。

効率が悪いようであるが、目の前に山積みしたタマゴを選別しながら手を動かし、言葉を投げ、相手の返す言葉に耳を傾ける。

休日の様子などを聞きながら、徐々に作業のペースを上げてもらい水曜日まで根気良くタマゴと向き合ってもらう。

昨日はご主人の運転でSLを追いかけながら島根までドライブをされたようだ。

パートさんの話を聞き、蒸気機関車が音をたて、煙を上げて走る光景を一緒に想像しながら作業の手を動かした。

私の疲れた体も癒されるようだった。

あだちまさし