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菜たね梅雨

よく雨が降りました。菜たね梅雨と言うんでしょうか。
春のやさしい雨とは言い難い日もありましたが、植物にとってはめぐみの雨だったようで、例年より少し遅れて農園の桜も開花をはじめました。

今朝はヒナの入荷で、育雛(すう)業者さんが夜明けとともに来園されました。
私たちが飼育している鶏は分業で育てられます。タマゴを孵化させヒヨコを販売する孵卵業者、ヒヨコが産卵をはじめる手前まで育てる育雛業者というふうな仕組みです。私たちが仕入れるヒナは百二十日齢前後で、季節によって異なりますが、三週間後くらいから産卵をはじめ、五百日齢ぐらいで役目を終え、加工場へ出荷します。

毎月ヒナを入荷して、約二カ月に一度のペースで鶏を出荷します。この間、できるだけ鶏に気持ち良く産卵させて、お客さまの受注にあわせてタマゴを出荷するのが私たちの仕事です。本日入荷のヒナが初産をはじめて産卵のピークに到達するのが、ちょうどゴールデンウイークで、加工場へ出荷するのが、来年の梅雨前くらいになるでしょう。

産卵の傾向は季節によって少し異なります。日長が伸びていく、これからの時期は初産も産卵ピークを迎える時期も早くなり、気温と湿度が上がってくる頃までは、一年で最も鶏が気持ちよく産卵できるシーズンとなります。近年、この産卵ピークに到達する時期が早く、鶏が高産卵を持続する力強さも増してきているように思います。

これは、孵卵場の研究機関で、良い成績で産卵をする鶏を交配させながら、より良い品種の改良がすすんでいる成果です。さすがに一日二個を産卵する鶏の種はつくることができないとは思いますが、温暖化の影響で、年々、気温が上昇するなかでも、ほぼ一定の産卵を計算することができるのは研究成果の賜物で、農作物の種の交配と同様です。

ただ、鶏の産卵感覚が研ぎ澄まされる一方で、何か大事な感覚を失っていくような気がしています。思い違いかもしれませんが、何か言葉や数字に表れにくい、張りつめた糸のようなストレスがあるのではと危惧しています。空と大地のあいだの恩恵をゆっくりと感じながらの仕事は難しくなりつつあるのかもしれません。

2024.3.27 あだちまさし