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花ひらく

農園には、仏教詩人・坂村真民先生の「念ずれば花ひらく」の詩碑があります。
世界に700以上ある詩碑。その542番碑に認定されています。

詩には、ただ念じて願うと花がひらく、夢が叶うというのではなく、何事も一生懸命祈るように努力すれば、自ら道が開けるという強い意味が込められていると聞いています。力強く書かれた一文字一文字に真民先生の奥深い「念」が感じられます。
「念」は、分解すると「今」と「心」からなります。過ぎた過去を悔やまず、未来を恐れず、いまを一生懸命生きる。いまを大切に生きないと花は開かない、こんな意味合いも重ねてあるように思います。

開園に際し、坂村真民先生が「朴の木」をこよなく愛されたことにちなんで、有志の方々が記念植樹して下さった朴の木は、見上げるほどの高さの巨木になりました。

毎年、新緑の季節の仕上げに開花をはじめる朴の木は、たくさんの枝の先に次々と大きな白い花を咲かせます。花自体は開花から数日で枯れてしまいますが、この花の魅力は甘い気品のある香りにあります。枝の先についた蕾が乳白色に色づきはじめ、開花の直前に最も香りが強くなります。次々とゆっくり開花していくことから、初夏をつげる季節、若葉のあいだを吹く優しい風とともに、しばらくの間、良い香りが心を癒してくれます。

今月、我が家の息子二人が、それぞれ人生の節目を迎えました。
いつものように慌しく通過した節目の日でしたが、少し立ち止まって人生を振り返ってみる時間をいただきました。父親らしいことが出来ていない後ろめたさはありますが、それぞれが自分の人生を自分で選んでいることの力強さと、親として幸せの余韻に浸りました。これからは親離れを心掛け、お互いに大人としての良い距離間をつかんでいきたいと思っています。

節目の日を通過して、今年は若葉の間を風がはこぶ、朴の花の香りをより一層心地よく感じ、真民先生の碑に刻まれた八文字の力強さをいつも以上に深く考えました。

2023.4.26 あだちまさし