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生産者

農園の仕事を通じて、お客さまから頂きものをする機会がよくあります。
とりわけ、堆肥のお礼にいただく、丹精こめて育てた野菜などは私の生活に潤いと彩りを与えてくれる良い潤滑油になっています。

少し前の話になりますが、農園の近所にお住まいの日本画家の女性から「ブルーベリー」を頂きました。キレイにパック詰めされた果実は農家さんが直売所など販売されるものと同様で、収穫やパック詰めのお手間は容易に想像できます。いつも室内でキャンバスに向き合っておられる印象がありましたので、思わず「私たちと同じ生産者すね」とお伝えしたところ、表情をほころばせ栽培の苦労を教えて下さりました。

ブルーベリーの木は吉部の山間部にあるご主人の実家に植えてあること、放っておくと果実の全てを小鳥がついばんでしまうのでネットをかけていることなど、収穫までのご苦労が多かった分、喜びもひとしおという感じで嬉しそうに話されます。こういった事を聞きながら頂くブルーベリーの果実は一段上の味がするような、そんな気がします。

嬉しい余韻にひたりながら考えてみますと、農業生産の当事者の近くにいるということは、鮮度の良い品物を手にすることが出来るのはもちろん、信頼できる生産者の方から頂くものには「安心感」があります。目には見えない心の安らぎが、近くにある日常がとてもありがたく感じます。また、生産者の立場からしますと、信頼して下さる消費者が近くにいるということは、農業生産への意欲につながり、生産の喜びを共感して下さるお客さまとの良好な関係が「好循環」を生み出します。

昨今、「令和の米騒動」などいった見出しで、農業生産の一部を切り取り、消費者の不安を煽るような報道のあり方に少し疑問を感じます。近隣の農家さんの現状を見ますと、問題の根は深く、長い年月をかけて衰退してきた生産力を取り戻すのは、そう簡単なことではないでしょう。

生産者と消費者の安心から生まれる好循環を大切に育てることが、心地よく仕事を続けていける備えになるように感じています。

2024.9.25 あだちまさし