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花言葉

今週初めから、冬の仕上げのような寒さが続いている。
今年は降雪がほとんどなく、乾燥した冷気が体の芯までこたえるような日が多い。今朝の気温マイナス六度。この冬一番の寒さになった。

「岡山おろし」という北西の風が殊の外冷たい。荒滝山のとなりにある岡山から吹き下ろす風が、川沿いに並ぶ鶏舎に滑り台を下るように真っすぐ降りてくる。同じ地域でも若干の気温差があるが、岡山おろしの影響で、低地に広がる農園の気温は二度くらい低い。ようやく週末からは気温が上がりそうだ。春の入口が待ち遠しい。

農園の白梅のつぼみはまだ固い。冬枯れの寒々とした景色だが、作業場に置いた小鉢には、ピンクの八重の花が咲き、少しだけ心と体に潤いを与えてくれている。

「お正月に眺めて下さい」と、配達先の湯田花園で頂いた西洋ツツジ・アザレア。年の瀬の気忙しさで、車に積み込んだ事を忘れるぐらいバタバタと配達を終えて帰ると、車の暖房が手伝ってか、店先で頂いた時のつぼみが花ひらき、健気なその姿に心ひかれた。以来、作業場で目の届くところに置いて共に過ごす。

日々、食べ物や生殖機会の確保に忙しく動き回る鶏と違って、植物は動かずに生きる。根から吸った水と葉っぱから吸収した二酸化炭素を材料に、太陽の光で光合成をしながら、ゆっくりと花を咲かせる。その様子の静かな移り変わりが、タマゴに囲まれて過ごす作業場での、ここ最近のささやかな癒しになっている。

「花がおわったら少し大きめ鉢に植え替えて下さい」そう付け加えて渡されたことを先日思い出した。例年、落ち着きなく年末年始を過ごし、疲れを引きずるように二月を迎え、あっという間にカレンダーの二枚目をめくる。寒さが厳しい季節、自分の力でどうにかなる事と、どうにもならない事が混乱しがちな時期でもある。

植え替え時期はまだ少し先になるが、気分転換に、アザレアの栽培方法や剪定のポイントなどを検索してみた。そこで、まず目に飛び込んだのが花言葉。「禁酒」と「自制心」。意味ありげに静かに花を咲かせる小鉢をひとり眺め、うーむと唸る。

2022.02.24 あだちまさし