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本来のはたらき

月に一度通う、かかりつけの処方箋薬局でのできごとです。
五、六人入ったら満員の小さな薬局の中には、長椅子があり静かに座って順番を待ちます。ガラスケースの向こう側の部屋には、数えきれないほどの薬が並んでいて、カシャンカシャンと薬を小分けする機械の音が絶えずします。

狭い店内ですから、薬剤師さんと患者さんのやりとりが耳にはいります。午前中はご高齢の患者さんが多く混みあいます。この日も、私の前に薬を受けとるご高齢の女性とのやりとりが少し聞こえました。

毎月のことのでしょうが、たくさんの薬を渡されながら、薬剤師がひとつひとつ説明をしていますが、「多すぎて、ようわからん…」と元気のない声で答えているのが聞こえます。私もそばで聞き耳をたてながら少し同情しましたが、薬剤師が、最後にと言って「骨粗しょう症」を補うビタミンとカルシウムの錠剤を手渡しました。

今まで、やや事務的口調だった薬剤師が、やさしい声で「日光浴と運動も大事ですよ」とつけ加えています。女性は小さく頷いて薬局をあとにしましたが、ビタミンの吸収やカルシウムのはたらきを助けるのには、お日様の下での運動が大事ということなのです。医学的な難しいことはわかりませんが、私もこのことは知っていました。と言いますのも、人も鶏も、この体の働きは一緒で、ある生産者の方から「骨粗しょう症」を例えにビタミンとカルシウムが、骨や卵殻をつくるのに補うはたらきを知ったからです。それと同時に、ハッとしたことを思い出します。

それまでは、産卵活動で不足するカルシウムを補うのに「かき殻」を、言われるままに少し余分に添加していました。飼料には、カルシウムを含め鶏が気持ちよく産卵できるように様々な栄養素が計算して配合しているにもかかわらずです。自分の心をジッと考えてみると、何か余分に与えることで、多く収穫が得られると思い込み、欲がはたらいていたのだと思います。ですから余分な添加はやめました。

お日様の下で運動をすること、つまり鶏の本来の活動に、なるべく制約を加えないのが、健康な鶏を育てるのに一番の近道だと考えました。命や自然のはたらきは、人知の越えたところで上手くバランスがとれるようにできていると信じることが、私の仕事が本質からずれないことだと考えています。

2022.11.28 あだちまさし