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こころの泡立ち

梅雨明け。これからが夏本番である。

例年、3月初旬ごろから、仕事の合間をみつけながら園内の草刈りはじめる。一日平均にすると一時間程度の肉体労働。農園の側を流れる厚東川の川土手までが私たちの責任範囲と決めている。

梅雨入りまでは農園全体の工程を2週間程度で刈り終える。この頃までは、刈り終えた農園の姿を見ると結構な充実感と達成感で心にゆとりも生まれ、やりきった仕事に自画自賛したい気持ちを抑えながらも、近隣の農家さんと「草刈り談義」に花をさかせる余裕もある。

心にゆとりがある時期は、少し高めに草刈りコードを走らせ、クローバーやカタバミを残しながら作業をする。花が弾けて、種を飛ばしながら横に広がるクローバーの白い花やカタバミの黄色や薄紫の花に目を細め、多少の疲れはあるが「こんな暮らしも悪くない」と、心の奥の方で喜んでいるのが自分でもわかる。

ある詩人が「楽天的な人はバラを見てトゲは見ない。悲観的な人はトゲばかりじっと見つめて、美しいバラの咲いていることに気づかない」と言ったそうだが、梅雨入り前と後では気持ちが一変する。

雑草がわずかに咲かせる小さな花がグングンと丈の長い緑に覆われ、元の荒れた休耕地の姿に逆戻りするのではないかという不安と悲壮感につつまれる。ブクブク、ザワザワと心が泡立ち、梅雨空の合間に日が射したりすると「また草が伸びる」とため息が漏れるのだ。

いくら刈っても振り向けば迫ってくる雑草に、草刈り機のアクセルも吹かし気味で大きな音を立てる。山に囲まれた農園を疎ましく感じ、高い湿度なかで緑の景色も滲んで見える。

そんなジメジメと汗がまとわりつく梅雨も明けた。ギラギラと輝く太陽の下で、仕事の合間の草刈りか、草刈りの合間の仕事かという作業も後半戦である。心の泡立ちを押さえて、心地よい汗を流したい。

日々、元気に働ける体に感謝しながら「コレもまたヨシ」と口笛まじりに夏を乗り切りたいものだ。

2019.07.25 あだちまさし