月別アーカイブ: 2018年6月

外は雨、内は汗

梅雨末期の豪雨、2日目。昨日は終日カッパ。夜干しして本日も朝からカッパ。

Fさんが出勤して来るまでの一時間、外は雨、内は汗で水分をカッパが水分を含んでグッタリ。

ちょうど産卵ピーク時間と激しい雨を降らせる雨雲の通過時間が重なり9時ごろまでは大変な仕事になる。

昨日から雨の影響で給餌を止めたので鶏舎内の餌も底をつきはじめ、鶏が嘴で空の餌箱をつつく、コツコツという音が雨音に混じる。

台風7号の通過にともない、来週はじめまで雨が続きそうなので、自分の仕事は後回しにして給餌の手伝いを1時間ほど。

Fさんが車に餌を入れたバケツを15個積み込み、Iさんが鶏舎内の餌箱へ運ぶ。飼料タンクから鶏舎までの往復作業である。

私は二人の中間で作業が早く進むようバケツリレーの手伝い。久しぶりの給餌作業だ。

一人で進める作業の3倍のスピードで進むので、二日分の給餌を50分ほどで終えることができた。

自分が作業のペースを作るつもりでリレーの真ん中に入ったが、顔色一つ変えずに淡々と進める二人に対し、私ひとりだけ息があがる。

二人に作業を教えたのは私だが、日々の積み重ねでつけた体力と要領の差ができてしまった。

コツコツと積み重ねる時間の大切さを改めて感じ、そんな二人に感謝しながら息を切らした。

朝6時30分に防災メールが入りはじめ、大雨、洪水、竜巻、避難勧告など10件。先ほど全て解除になった。

外は雨、内は汗の一日。ありがたい気持ちで作業を無事終えることができました。

あだちまさし。

曲がったキュウリ

夏を感じさせる一日。最高気温30度。

汗をかきながら農園の作業を終えて、配達の途中「栽培屋さと」のサトちゃん宅へ立ち寄った。

収穫したキュウリが並べられた作業場で冷たい炭酸水をご馳走になりながら30分ほど実のある会話をさせてもらった。

自家消費用と前置きして「曲がったきゅうり」のお裾分けを頂き、野菜とタマゴの規格外の話題。

味や鮮度には問題ないものの、店頭で販売が難しい規格外はつきもので、何かと生産者の頭を悩まさせるものだ。

規格外を販売する先を確保するのも大事だが、これを減少させていく努力は絶えず必要だと感じている。

野菜の場合もそうだと思うが、その答えは生産現場にあり、私の場合、鶏に聞いてみるしかないが鶏には言葉はない。

変化する季節のなか、ひとつひとつ問題点を手探りで探す仕事は大変だが、結果が少し見えはじめると作業意欲も増すものだと思う。

生産者の目線だと、味や鮮度に問題がないことをキチンと説明して販売すれば良いと錯覚しがちだが、日々、台所に立つ主婦の目線に立つと不揃いな野菜やタマゴは少々厄介モノであるに違いない。

野菜や生き物の恵みを商売とする私たちにとっては、ありがたく恵みを頂くこととは少々の矛盾を感じる規格外の商品だが、

生産者としての、こだわりを大事にしつつ、お客さまの立場を考え規格を安定させる努力は大事だと再確認した。

帰り際、20本ほどある不揃いキュウリの中から、小さくて曲がっているが艶の良いキュウリをサトちゃんが指さしながら「これ美味しいっすよ」と教えてくれた。

コレは、コレで、生産者でしか味わえない醍醐味(ちょっとオーバー?)で、ちょっとした優越感もあったりする。

あだちまさし

季節はずれの梅の花

今年、農園の梅の木もたくさん立派な実をつけた。

昨年末から徹底的な冬の寒さと水不足。もう春が来ないのではないかと心配したが、花を咲かせたのち、立派な実をつけた梅の木を見上げると多少の蒸し暑さも有り難いような気がしてくる。

毎年、農園で働く男性が裏山で収穫した梅の実を持参してくれるのが風物詩。口数が少なく、あまり感情を表に出さない彼は私と同じ年。働きはじめて7年目になる。

雨の合間をぬって母親と山で収穫した今年の梅は豊作で両手に抱えきれないほどの大きな袋入った梅の実と、昨年、母親が手作りした梅干しを添えて出勤してきた。社交辞令のような言葉はなく「どうぞ」と言って差し出す姿も例年どおり。

口数少ない彼と私たちの間を取り持つように母親が持たせる梅の実だが、彼が嫌々持って来ているかというと、そうではない様子で、両手を差し出す表情からは、今年も少しの明るさが窺える。

彼には心に感じた事を上手に言葉で伝えることが出来ない難がある。その分、様々な苦労と遠回りして農園で働くようになった。おそらく、母親も前になり、後になりながら同じ苦労を重ねてきたことだろう。

私は大きな袋に入った梅の実を受け取りながら、彼と母親の遠回りの時間に思いを重ね、いつもの会話より時間をかけて収穫の様子などをポツリポツリと聞かせてもらい、心から感謝の気持ちを伝えた。

彼は照れくさそうに「いえいえ」と顔の前で右手を振り、小さな笑顔の花を咲かせてくれる。こんな時の彼の笑顔は、満開の桜のような花ではなく、寒さに耐えながら蕾を膨らませ花を咲かせる梅の花のような笑顔だと私は感じる。

彼と共に辛抱の花を咲かせ、立派な実をつける事ができるよう心に願った。

あだちまさし

菖蒲の花をひとくちで

朝5時前、朝食と新聞を並べてカーテンを開ける。

朝日が差し込み、照明をつけずに新聞が読める季節になった。

照明を必要とせずに新聞の活字が読める明るさというのが、鶏の活動時間のひとつの目安である。

鶏は視野が確保できる明るさになると活動をはじめ、この明るさがなくなると体を休め睡眠する。

夏至まであと一時間ほど活動時間が長くなり、この時間を基準に日長管理をして産卵活動を促すのが生産者の仕事。

早朝の涼しい時間に農園作業を手伝い、小野田市内の配達へ出かけ、いつも暖かく出迎えて下さるウエスギのおばあちゃんから和菓子を土産に頂いた。

菖蒲の花を形どった和菓子を丁寧に紙に包み手渡して下さった。

農園へ戻り、翌日の出荷準備を終えて、草刈り機を担ぐ前に、その「菖蒲の花」をパクッと口に入れてから草刈りを始める。

運動場で鶏が遊ぶ姿を横目で確認しながら、日没近くまでアクセルを握って園内を移動しながら草刈り。

日没間近の19時半ごろ、名残惜しそうに運動場で遊んでいた数羽を竹箒で鶏舎に入れて本日の作業を終えた。

珍しく口にした和菓子の甘さが夕食まで腹の虫をおさえてくれて感謝した。

あだちまさし。

残したくないもの

昨日、一頭のイノシシを駆除した。体長50センチのウリボウなので一匹というべきか。

数日前に逃がしてやったウリボウが土曜日の日中、農園内で闊歩した。

追い払ってもきりがなかったので午後から覚悟を決めて、ネットまで追い詰めて止めを刺そうと棒切れを振り下ろしたがケツにあたり仕損じた。

すぐ手の届くところだったのに、なぜか気後れのようなもので手元が言うことを聞かなかった。

日曜日も早朝からウリボウが闊歩。見た目は愛くるしいが、ここまま居座られては困るので前日同様、ネットまで追い込み棒切れを用意する。

取り逃がしては厄介なので、Fさんにカゴを持たせ、私が叩いたところを生け捕りにして猟師に引き渡そうと作戦を変更して獲物に近づく。

生け捕りにするので、前日より肩の力を抜いて棒切れを振り下ろしたのだが、幸か不幸かウリボウの眉間にゴッツと当たり一発で絶命してしまった。

厄介な存在ではあるが棒切れを握る私の手には後味の悪さだけが残る。

昨年、本来、農園を担当していた猟友会の方から、近所の猟師に担当を引き継いでもらう際、役所の害獣担当者にも一役買ってもらいスムーズにことが運んだ。

当初は、これで大丈夫と安堵したが、野生動物が境界線を越えて人里に下りてくる理由を詳しく調べていくうちに駆除以外にも見直さなければいけないことに多々行き当たった。

山林の荒廃は私ひとりの力では何とも出来ないかもしれないが、意識しながら自然と付き合うことで、私に出来る何かがあるはずとも感じる。

駆除される動物も本望ではないだろう。そして、駆除の後味の悪さは後の人へは残したくないものある。

あだちまさし。

おいとま頂く

今日は終日、梅雨空。日照時間ほぼゼロ。

梅雨入りしてから中休みが続いていたが、ようやく梅雨らしい天気。湿度はやや高めだが気温20度前後と比較的過ごしやすかった。

この時期、厄介なのが雑草と鶏舎の害虫。どちらも自然に絶えることはない。

鶏につく害虫は2月ころから予防駆除をして繁殖を防ぐ。湿度と気温が上がってくると孵化速度が上がり手に負えなくなるから。

ケージ飼いと違い、日中は鶏自身も砂あびや毛づくろい等するので爆発的に増えることはないが放っておくことはできない。

雨が上がると蒸し暑くストレスが多い時間が増えるので、朝から作業のポイントを伝えてから配達に出掛けた。

配達と翌日の段取りを終え、鶏舎周りの草刈りを始めると草むらに茶色い陰がある。

何かの拍子で鶏が外へ出たのだろうと近づくとウリボウだった。鶏の2倍くらいでサッカーボールより少し大きめのイノシシの子どもだ。

警戒心がなく近づいても逃げない。手の届くところまで距離を縮めると私に気付き、ゆっくりと逃げ出した。

足元がフラフラ、かなり弱っているようだったので、ひと思いに撲殺しようか迷ったが、ウリボウが逃げるのに任せて、しばらく後をつけることに。

そのうち防獣ネットに足が絡まり倒れ込んだので、ネットをハサミで切って「おいとま」してもらった。

衰弱いたので長くはないだろうが、仮に大きく成長したとしても今日の恩は忘れないで欲しい・・・が無理な話だろう。

あだちまさし。

伐採される竹を見ながら

農園のご近所に竹を伐採する業者が入り出して一ヶ月がたった。

仲良くお付き合いさせて頂いている60代の農家さんが先代から相続された2?の裏山に重機が入り、伐採した竹を大きなトラックが搬出している。

一ヶ月作業をして、やっと半分程度の伐採が終わったそうだ。

一年前に「竹を資源に変える」という業者の説明会があり、伐採を希望された。時間をかけて測量や業者との打ち合わせ済ませて、ようやく作業開始。

伐採と聞くとチェーンソーでブンブン倒していくかと思いきや、そう簡単にはいかないものである。

もともと、先代が杉を植林して財産とする予定が、時代の移り変わりと共に木材の値段が変わり、農家の働き手の価値観も変わった。

手付かずになった人工林が竹に占領され、10年前からはイノシシも出没するように。必死で守ってこられた水田の被害も深刻化してきている。

農業が好きで後継者として吉部に残られたわけで、山が荒れてゆく景色に一番心を痛めておられるのはご本人だろう。

子育て、親の介護をしながらの稲作だけでは生計が立てられず、兼業農家という選択をするしか方法がなかったはずだ。

幸い、先代が後継者の間伐を助けるために山道をつくっていたのと、土地に関する書類を整備されていたことで、他の伐採希望者より作業の取り掛かりがスムーズに進んだとお聞きした。

伐採されて運び出される竹を見ながら、自然と暮らすことを自分の事として深く考える。

2日前の投書欄に下関市在住の60代女性の記事があり、目の前の風景と重なった。

あだちまさし。

「好きな里山なのに」

先日、熊が鹿のわなに入ったと聞き驚いた。その4、5日前、隣家のクリの木のそばを熊が歩いていたと聞いていた。

夫はタヌキだろうと言うので安心していたら、現実に熊がいたのでびっくり。熊はこの数年、近隣の町で出没したことがあったが、我が家の近くに出てくるとは思いもしなかった。

翌朝、隣の奥さんと見に行った。初めて見る野生の熊は興奮し、鋭い手のツメで土を掘り、わなの柵にかみついて逃げ出そうと必死の様子だ。鹿のわなだけに暴れた勢いで逃げられそうに感じた。怖いので少し離れた所から見ていた。

わなの持ち主が県に早く来てくれるよう連絡し、県の要請で猟友会の人が殺処分し、調査のため持ち帰った。ツキノワグマの雄だった。

我が家の周辺は、山の獣が何でもいる野生の王国になったような気がする。生きるだめに食べ物を探し回って出没した熊の最後に考えさせられた。

私が小学生の時代から杉、ヒノキの植林が盛んになった。両親が県林の植樹作業に度々、出掛けていたことを覚えている。

雑木林が少なくなって今、杉、ヒノキ林は大きく育っても手入れする人がいなくなり、山は荒れている。全て人がしてきたことだ。

新緑に染まったきれいな山を見つめていたら、ため息が出る。里山で育ち、里山に嫁いだ。私が大好きな里山なのになぜか悲しい。

今年の新緑の山は、私の心に反して特別な色合いをしている。

下関市・農業S・67歳

(2018.6.3 毎日新聞 女の気持ち)

野菜工房のレノファ弁当

昨日のJ2試合結果。山口2−2千葉。引き分け。レノファ山口、第17節を終わって順位を一つ下げ3位。

今シーズン開幕からお取引先の「野菜工房さま」がレノファ選手の弁当を受注されている。毎回ではないようだが、金曜日の朝、配達に伺った際に「今日もレノファ」という言葉をよく耳にするようになった。

八百屋と玉子屋が朝から交わす会話に「レノファ」という単語が入り、サッカーで地域が活性化していることを体感している。

一昨日、開店前の店舗で店長さんが一人で「レノファ弁当」を盛り付け中だった。キッチンに所狭しと並んだ弁当箱は完成間近。我が農園のタマゴも「ゆでタマゴ」にて左隅に鎮座している。

先ほどまで、早朝アルバイトで大学生の娘さんが手伝いに来ていたと聞き、親子の連携プレーで奮闘される姿が目に浮かぶ。

チームから質、量とも細かい指定がある弁当なので、家庭でも試作や作戦会議があったのではないだろうか。

野菜工房の弁当は、この春から予約販売に切り替えられた。ロスがない分、予算額いっぱいで「こだわり食材」を使った弁当づくりをされている。

レノファの予算額は存知あげないが、味とボリュームは間違いないはず。それに加えて「レノファ、レノファ」と笑顔でキッチンに立たれる店長さんの愛情もたっぷり詰まっている。

こんなカタチでJリーグと接点が出来るとは考えていなかったが、以前より選手やチームを身近に感じるようになった。

活性化していく地域の一員であることが嬉しい。

あだちまさし。