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市場

タマゴの出荷を仲介して頂くため青果市場に出入りしています。
毎週三回、仲卸業者へ納品し、そこから近隣の小売店の店頭にタマゴが並びます。
納品のため出入りする市場の風景から様々なことを考えます。

下関の百貨店、いわゆる「デパ地下」の八百屋にタマゴが並んでいます。テナントの入れ替わりで一旦途絶えましたが、後継で入店された八百屋が「対面販売」でお客さまからタマゴのリクエストを吸い上げられ、取引を再開していただきました。その際、仲卸を介してのルートをつくっていただき、市場に出入りするようになって十年くらいになります。

市場の近くを配達で通過する際に納品しますので、曜日によって納品時間は異なりますが、土曜日は深夜と早朝のあいだ、市場の一番活気がある時間帯に入ります。様々な事情から近年はずいぶんと取引量が減少してきていると聞いていますが、忙しく行き交うトラックやフォークリフトで活気がある場内を縫うようにして納品します。

場内ですれ違う業者さんは「おやした」という短く力強い声で挨拶されます。「おはようございまいした」が短くなった挨拶だと思いますが、鮮度を最優先にされる仕事の気概というんでしょうか。背筋がキュッと伸びるような、身が引き締まる心地よい緊張感が場内にはあります。

仲卸さんの仕事は、市場から仕入れた青果を仕分けし、個別の店舗へ配送するのが主な業務です。早朝の加工場の作業台の上には、たくさんの野菜や果物が積まれ、ベテランの女性従業員さんが手際よく個別に袋詰めして、店頭に並ぶ商品のカタチに調整されていきます。一見、簡単そうな作業ですが、それぞれ形の違う野菜を見栄え良く整えるのは経験と勘が必要な仕事です。

私たちも農園で生産しているタマゴをお客さまにお届けする際に、飼育方法やタマゴの味など「こだわり」をお伝えするのに多くの時間を使っていますが、一番大切にしているのは「鮮度」です。自分自身も消費者として、とかく価格の上がり下がりで右往左往しがちですが「あって当たり前」の便利さの裏には、物流に携わる多くの人の苦労があることの大切さを、夜明け前の市場風景が教えてくれます。

2023.9.28 あだちまさし