月別アーカイブ: 2023年1月

心のずっと奥のほう

同級生のユキちゃんが亡くなって一年になります。
四十八歳。三人の子育ても最終コーナーに差し掛かったところ、生きる希望を最後まで諦めなかった彼女の気持ちに、今でも心を重ねます。

彼女とは、小学校、中学校でもよく同じクラスになりました。でも、私は彼女のことをよく知りません。記憶に残っているのは、ご両親がいつも学校の行事へ夫婦揃って来られていたこと。お父さんは、どこかの大学で音楽の先生ということはウワサで知っていました。音楽室に掛かっている肖像画のような目力強めのお父さんでした。家も近所でしたが、学校以外で彼女をあまり見かけなかったのは、ピアノの練習や習い事が忙しかったからではないかと、いまになって思います。

偶然の縁が重なって再会したのは十年くらい前。次男が所属しているサッカーチームに転校生ではいってきたのが彼女の長男Sくんでした。お姉ちゃんも我家の長女と同じクラスになり、家内も親しく付き合うようになったので、よく彼女の家庭の事を聞きました。シングルマザーで仕事と子育てを両立する彼女の一生懸命生きる姿は、私の想像をいつも越えていました。

もっと楽に生きられるのでは思うこともありましたが、たくさんの友人に囲まれて充実した様子が印象的でした。人にやさしく接する彼女は、周りの人に良い影響を与え続けたように思います。子育てに関して話をする機会はありませんでしたが、陽のあたるほうへ真っすぐ花を咲かせるような心配りが、ふんだんにあった家庭だったのではないでしょうか。

三人のお子さんがそれぞれの進学を控えたころ、重い病が見つかり、コロナ禍のなか面会もままならない病室で闘病する彼女のことを思うと、いつも胸が痛みました。

最近、柳田邦男さんの記事の中で次のような言葉を見つけました。
「大切な人を亡くした悲しみは乗り越えるとか乗り越えられないといったものではありません。時間が解決するなんていうのは嘘です。悲しみを受け入れて、悲しみを基盤にして生きていくことが大切です。」

一生懸命、つよく、やさしく生きた同級生のユキちゃんのことを、私は忘れることはないと思います。
2023.1.26 あだちまさし