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耳をすまして

仕事上、毎日かかさず、鶏舎に入ります。
朝に晩に全部の鶏舎を歩くだけでも、かなりの労力ですが、採卵や給餌など加わるとボリュームが更にあがります。

一年で一番日没時間が早い季節、周囲は暗闇ですが、鶏舎のあかりを頼りに、仕事が終わった鶏舎を採卵で歩いて回ります。一日の作業結果がよくわかり、気忙しく採卵してまわる朝の作業とちがい、鶏の様子もよく観察できます。昨日は、翌朝の最低気温がマイナス予報だったので凍結防止の排水作業をしながら採卵作業。夏場に比べ、一日の終わりの採卵量はわずかですが、同じ時間をつかって鶏舎を巡回します。

ちょうど昨年の今頃は鶏の悪癖が止まらず辛い日が続きましたが、鶏の様子も落ち着きを取り戻し、なんとか成績は上向きになったことに多少の安堵は感じています。

悪癖の要因はおそらくひとつではありません。様々なことを頭の中で自問自答を続けるなか、五月半ばに心当たりを付け、わずかな工夫をしました。その成果あってか、鶏の落ち着きに若干の変化がうまれたように感じています。言葉のない鶏の様子は産卵や求める餌の量から答え合わせをしますが、独自採点ですから、まだまだ改善の余地に耳をすましていかなければいけません。

私たちのような、人の働きが主な要素となる労働集約型産業でも、AIを使って省力化する研究が進んでいると聞いています。同じ産業に携わるものとして切実さは身にしみますが、先月読んだ紙面、地元出身の日本画家で、文化財修復の第一人者である馬場良治先生の言葉に気づきがありました。

講演会で馬場先生は、常識外れの素材の修復作業でも、地域の歴史や文化、気候など、様々な角度から考えて最適な方法を見つけ出した経験の原動力は「感性」としました。そのうえで「答えだけを求めることは、感性を磨くことにはつながらない」と指摘します。さらに「人間の未知のものは感性なんです。ChatGPTは感性を生んでおりません。知識の凝縮です。知識の凝縮はものを作り出せないんです」と話されます。

タマゴは工業製品ではありませんので、より良いものを目指していくには、感性を磨いていくことが大切な要素になってくると感じています。

2025.12.23 あだちまさし