ハッピー物語

昨夜は家内が泊まった。わたしは、いつも8時ぐらいに眠くなる。突然の悲鳴で飛び起きた。バラエティー番組をおそくまで見て、炊飯器など朝の用意をしていた家内が、流しの下にある扉を開けたときムカデに触ったらしい。ハエ叩きで殺し、ごみ箱に入れてすぐ寝た。朝起きて、あれは夢か現実かよくわからないほど寝ぼけていた。
防府市のMさんに配達。お宅の前にそうとう深いヤブがある。放置されながいようで木も生えている。
このヤブの奥で野良犬(ハッピー)は出産した。Mさんがハッピー物語を演出された。詳細に聴いた。
野良犬はこのヤブを住みかにして住宅地をウロウロして、飼い犬の餌を食べたり、残飯をもらったりして地域に好かれてはいないが、嫌われてもいない不思議な存在だったらしい。
痩せた体の野良犬が妊娠した。腹だけが大きくなった姿で、食べるために歩きまわった。梅雨の6月、野良犬は出産したらしく、痩せた体に乳房がゆれた。
梅雨の豪雨が続いた日。ヤブの奥から子犬をくわえてMさんのお宅から見える場所に運びはじめた。水かさが増し子犬が溺れそうな状況にMさんご主人(自衛官を退官)が目撃され、夫妻で豪雨のなか子犬を庭の倉庫に運んだ。その様子をみて母犬は次々に子犬をくわえてきた。全部で7頭。
夜になると倉庫に母犬が現れ、人が来たら逃げるように立ったまま授乳。深夜になれば、朝まで横になり授乳。食べ物がじゅうぶんではないから生育不全の子犬もおり、Mさん夫妻が昼間にミルクを与えた。
親子を支援する人が増え、はじめに子犬の里親探しがはじまった。物語が理解されたのか7頭は引き取られた。
親をどうするか。とにかく捕獲することになり倉庫に餌を置いて入るチャンスを待った。餌を食べはじめたとき倉庫の戸を閉めた。
噛みつくかもわからない。手を出して触ったらおとなしい。抱いて首輪をつけられた。
地域の方々は高齢で、若い犬を無責任に飼うことはためらわれ、お金を出しあってペットクリニックで避妊をされた。術前の検査で心臓に寄生虫(フィラリア)陽性。
このペットクリニックに卵を届けており、避妊手術直後、体を震わせていた野良犬をわたしは見た。先生から事情を聞いて、卵のお客さまに飼う人はいないか探した。糸賀社長を含めて3人が手を挙げた。フィラリアも告知したうえ。
わたしは飼う気持ちはなかった(はなちゃん・太郎・コロちゃん・健太の4頭で精一杯)ところが、いろいろ事情が出てきて飼う人がいなくなった。
6月に捕獲されて約半年、みなさんの善意で野良犬は生きてきた。家内に事情を話て農園で飼う了解を得た。フィラリア陽性の犬を仲間に入れると感染のリスクはたかくなる。
11月の末、家内と野良犬を引き取りに防府市に行った。Sさんご主人が「ハッピー」と命名。ドッグフードや数々の結納をいただき、わたしにはにいがたの越乃寒梅。家内にはエプロンなどをいただいた。農園に戻ったら結納の一番下に茶封筒があり、ハッピーを野良犬から飼い犬に登録してください。と書かれたメモと登録料が添えられていた。
毎朝、わたしの顔を下から上にペロリとなめあげるハッピー。それ以外は媚びることもなく淡々としている。
夜中に散歩に連れ出すと座って星を眺める。今月はハッピーが捕まって6年目になる。