こころの壁を超える

「こころの時代 宗教・人生」今朝のテーマは「こころの壁を超える」

文化人類学者 加藤九祚(きゅうぞう)さん93歳を三宅民夫さんが仕事場に訪ねた。
中央アジア ウズベキスタンで発掘を現在もされている。
過去の人は掘ることにより蘇り、シルクロードの時代、世界は戦いではなく生活でつながっていた。その過去を知ることから現在を考えたい。
三宅民夫さんのインタビューは、相手の心の扉をあける。
加藤さんは1922年、朝鮮半島南部で6人兄弟の4番目として生まれた。朝鮮名はイ・クジョン。
10歳のとき日本で働く兄を頼り海を渡った。兄は山口県宇部市西岐波の長生炭鉱で坑木を馬で運ぶ仕事をしていた。
兄は床波の民家の長屋を借り、馬と寝起きしており同居した。
番組で加藤さんは、その民家を訪ねた。加藤さんが世話になった当時は赤ん坊だったが、いまは家の主と対面。加藤さん当時を回想した。
冬の寒い夜、馬の体はあたたかい。腹に身体を寄せたとき母のあたたかさを思い出した。昔を語りながら涙をこぼされた。
鉄工所で働きながら懸命に勉強をして上智大学に進んだ。そして日本は開戦した。大東亜共栄圏の旗印に加藤さんは共感して陸軍工兵学校に進み、終戦は満州。ドイツ語はできたからソ連兵の西部戦線還りから日本兵捕虜のシベリア行きを聞き出した。
すぐにロシア語を勉強する本を手に入れた(ロシア語は現在発掘で活躍)。4年8ヶ月の抑留生活で事件があった。3人の日本人が極寒のなか収容所から脱走した。2名は数日後に捕まり、あとの1名は計画的に「食料」として連れ出され、脱走直後に肉にされ飯盒のなかに詰められていた。その体験は「シベリア記」として出版されている。
最近になり、はじめて韓国の故郷を訪ねた。朝鮮戦争で昔の面影はないが、両親の墓地近くにあった巨木はあった「この巨木が墓です」
親戚も集まり歓迎の宴が催された。
なぜ故郷に帰らなかったかを加藤さんが語った。
志願して日本の軍人になったこと。母国語を話せないこと。
このふたつが故郷を訪れる足かせだった。

こころの壁を超えられた。

著書は「シルクロード考古学」などたくさん。