どんぐりを植える人

朝6時。気温5度。晴れ。最高気温13度。12月にしては、心地よい一日。

一昨日の朝は今年三度目の「大霜」で手先や背筋が凍るような朝だったが、今朝は霧に包まれ湿度が高く穏やか。

月曜日の朝は寝起きから、少し愚痴も出て、日曜日に疲れた体を起こすのに時間がかかる。

鶏の産卵に押されながらの一人産卵仕事。

今朝は仕事の取り掛かりが遅かったので、体の痛い所がが気になったり、言葉が通じない鶏にあたったり・・・

そんな気持ちでの作業中、9時前ごろ、藤ヶ瀬のMさんが突然の来園で、鶏舎の中の私に声をかける。

「鶏糞堆肥が欲しいんじゃけど」

体も心も一杯一杯だったが、作業の手を手を止め、少し雑談を交わす。

自分のことを「ボク」と言われるMさんは60代半ば。角刈り頭の大きな体と多くを語らないお人柄。

楠消防署の署長を数年前に退かれ、今は「夢」だった農業を全力で取り組んでおられる。「ボク」から話し始められると、上から目線で話したくなる人も多いと思うが、

父と同じ年のMさんは「ボクは・・・」と言いながらの自然体だが、かなり見識が深い。

6年前に農園で大きな事故を起こした時に、常に私の心に寄り添って下った恩人でもある。

今日は堆肥のお礼にと、

昔から栽培されている「ゆず」、自家製の「ゆず味噌」。あと先週捕れた猪の脂身タップリの「ロース塊」。

こちらの方が恐縮した。

「最近どうですか?」と尋ねると、笑顔で「どんぐりの木をたくさん植えよる」とのこと。

椎茸の原木と、「炭」を焼くのに必要だから。と・・・

今年植えた「どんぐり」が原木になるまで「何年かかる」と尋ねたところ「30年」とキッパリ。

原木になる30年後は90歳オーバーでしょ。とか、猪の好物「どんぐり」を増やしてどうなるの?と頭に過ぎったが

60年以上、吉部で生活されている皆さんに教わることはあっても、口を挟むことはない。

「どんぐりの実」を里山へ放流??するような取り組みも知ってはいる。

山が荒れると実をつけ辛い状況の樹木も多くあるだろう。

何かそんなことを考えながら

あだちまさし