理想と現実


宮崎県内自治体の数が33だった30年ほど昔。国富町議会から要請を受けて営業に行った。宇部から12時間の運転だった。滞在して会議録市場を調べてみたら、宮崎速記士会(個人の集まり)が市町村の会議録を請け負っていた。
わたしが走りまわるとペンで生計をたてておられる方々の仕事を奪うことになる。しかし関西から関東の同業者も営業をはじめていた。3~4年で宮崎県下の決着は我が社の勝ちで一段落した。そのころ日本速記協会の会報に「悪貨が良貨を駆逐する」と速記者から会議録業者への恨みが活字になった。
美祢市にヤマダ電気が進出する。美祢市をはじめ近隣の電気屋さんの廃業は間違いないだろう。今朝の配達で聞いた。シャッター通りと称される廃業に追い込まれた小売店。他県で速記で営みを続けていた、ペンひとつで家庭を守っていた宮崎に、わたしの理屈で踏み込んだ過去を思い出した。あのとき我が社が行かなくても他社が契約した。生きることはまるくおさまらない。