石橋談義

橋を眺めるのが好き。配達コースにもお気に入りの橋の風景がある。一番好きな橋は、むかし宮崎県飫肥から日南市まで飫肥杉の搬出でつくられた堀川運河。その運河が太平洋と交わる手前に少しアーチの石橋がある。あの風情が街並みに溶けこんでよい風景。
観光吊り橋や、観光カズラ橋には興味がない。宮崎県椎葉村には村人の生活をささえているカズラ橋がある。
大分県や熊本県には石橋がたくさんあり、とくに大分県山国川にはたくさんある。山口県には萩市三見の旧赤間街道に巨大な石橋がある。
あの石組みは、組み合わせた石の重量バランスだけで曲線を描いている。どういう工法で完成するのか知りたかった。
配達先に石材店のお宅があり、たまたまご主人が在宅だったので「教えてくださいませんか」と頭をさげた。
図を描いて、わたしにわかるよう説明してくださった。橋が出来て石を支えている木材や足場を撤去すれば完成となる。その支えを外していくとき、棟梁は橋の真ん中に立つ。崩れたら大勢の人夫が石の下敷きになる。親方は万全の工場の自信を真ん中で示す。
あの石橋を積み上げた当時の計算方法がわからない。勘で出来るものではないと。

足立美術館でゆっくりできた満足感が、まだ余韻をのこしている。「心ゆたか」が少しわかりはじめたのかも知れない。