ふるさと言葉姉さま

まだ月も星も白く輝く夜明け前、ハッピーのリードを握り長距離散歩に出た。
四方の山から川を目指してカワウやサギが舞い降り、カラスも上空で旋回している。鳥たちの朝は早い。
農園に通じる唯一の橋は50年の間に濁流で二度流され、平成に入りコンクリート橋になった。農園側の護岸はコンクリートで増水の浸食から保護され、対岸は岩肌、つまり天然の丈夫な護岸。
ハッピーが何かに反応して唸った。頭は川に向いている。護岸に立ったら足下の深い雑草の中を動物が音をたてて走った。雑草の倒れかたとスピードから判断すると大きなイノシンらしい。体当たりされたら命が危ない。

まだ刈り終えていない近くの田んぼにイノシンが昨夜も入り稲を踏み荒らしていた。
最近、メモ帳とペンを持ち歩く習慣が身に付いた。さっそく一句。

ケモノらが 田畑を荒らし冬じたく

餌があるうちに食べておかねばならない事情もある。

散髪とトイレに風呂掃除が午前中。
美祢から80歳も後半のおじいちゃんが軽トラックで卵を買いに来た。以前「配達するから」と言ったら。農園の往復で、景色を楽しみながら季節感あふれる俳句ができるから運転を楽しみにしていると話された。
手帳に書いた数々の句を見せてくれながら「姉さまが96で亡くなった」と、その一句を指さした。
句より、久しぶりに耳にした長州言葉「姉さま」がよかった。
爺さま・婆さま・兄さまに姉さま「さま」で敬う。男の子は、清は「きょん坊」・隆は「たか坊」・淳一は「じゅん坊」・健二は「けん坊」と「坊」づけで呼んでいた。
最近「ふつうに」とか「やばい」に「マジ」など、日本語が軽くなっていると思うから「姉さま」言葉がよかった。

万歩計8000歩