失敗は成功のもと

台風通過にともない秋雨前線が刺激され、まとまった雨が降り続いている。来園される農家さんからは、収穫が迫った稲穂の生育状況や、降り続く雨でコンバインを水田に入れられるか心配する声をよく耳にするようになった。

農繁期に入る農家さんと共に忙しくなるのが吉部農協で農機の販売や修理を一人で請け負われる営農担当者。普段は閑散とした倉庫に修理を待つ農機具が搬入され、稲刈り作業の途中で止まったコンバインの出張修理などで大忙しになる。一斉にはじまる収穫時期の不測の事態に備えて戦々恐々といった感じだ。

農園で鶏との営みを生業とする私たちも不測の事態はたくさん経験して、当然、たくさんモノも壊してきた。経験が浅い私が予測できないことを、縁あって共に働く障害がある人たちが理解し予測することは不可能で、突然おこるトラブルに動揺し、感情を抑えきれず叱責したこともある。後悔ばかりが先に立ち、お互いに心が壊れかけた苦い経験もした。

自然と隣り合わせの農園で、言葉の通じない鶏との営みには、未だ分からないこともあるが、彼らと失敗を重ねるうちに身につけた知識も少しずつ増えたように感じる。

モノが壊れる時には、いくつかパターンがあって、モノの道理が分からずに壊してしまう場合と、分かっているのに不注意から壊してしまう場合がある。前者は私の取扱い説明不十分。後者は仕事に対する「焦り」や「欲」が絡むことが多い。

仕事に対する焦りは、昼食前や終業間際などの仕事を早く終わらせたい時間帯に自分の能力以上の仕事を抱えた時に起こるトラブル。彼らの能力を超える仕事を不用意に与えてしまった責任は私にもあるので、共に反省しながら、いくつか失敗を乗り越えてきた。

一方、仕事を重ねてつけた自信から、もっとたくさんの仕事をしたいと欲が出てきた時の見極めが不十分で起きた失敗は、見逃すと大きな心の傷となり、こればかりは営農に頼んでも修理が不可能である。彼らが日常の仕事を通じて、少しずつ積み重ねた自信を見逃さず、自発的協力関係を失わないような言葉かけと、失敗を受け止める心の寛容さを持ちたいと常々思う。「失敗は成功のもと」だから。

2019.08.26 あだちまさし