台風一過

「台風ヨウジョウが忙しいけぇ、土曜は無理じゃぁ」
先週、木曜日の夜、来月でハタチになる長男がスマホ片手に大きな声で友人に断りを入れていた。台風接近で休日だったはずの土曜日が養生作業なったようだ。社会人2年目。現場の強風対策があるようだが、友人と話す声には張りがあり良い緊張感を持って仕事をしている様子が伺えた。

私は、聞き耳を立てながら新聞に視線を落とし、半人前のクセに偉そうなことを言うと「やや上から目線」で見下しつつも、そんな彼を少しだけ頼もしく感じた。

通り魔的に千葉県を通過し、甚大な被害をもたらした台風15号が記憶に新しいなか、17号の発生で警戒感が増した。農園でも鶏の産卵は止める事は出来ないので、風雨の中での日常業務に加え、台風養生が増える。大きな自然の力と、止まることない営みの狭間でジタバタしても始まらないので、淡々と台風情報を収集し、いつものように気持ちを落ち着けた。

最近、台風の進路や速度が以前と少し変わってきているのは温暖化の影響も無関係ではないようだ。気象予報が速く正確にキャッチでき、被害状況もリアルタイムで把握できるようになったが、今までの経験が当てにならなくなったのも事実である。

地球環境を守るため世界各国が足並みを揃える難しさを伝えるニュースや、異常な気象が常態化しつつあることを、日々、肌で感じてはいるものの、不自由なく便利な生活を送りながら、自分に出来ることを考えた時、いまの暮らしを制約していくことには戸惑いと、少しの気後れを感じる。

今日は移動性高気圧に覆われ、台風一過の爽やかな秋晴れ。
田んぼの畔にたくさんの彼岸花が咲く。青い空と黄色の稲穂に囲まれたコントラストに赤い曼珠沙華が映える。自然の営みを美しく「ありがたい」と感じる心は、小さな自分にも出来る事に、一歩を踏み出す勇気を与えてくれるように思う。

2019.09.24 あだちまさし