日別アーカイブ: 2016年9月29日

横へ横へ

朝6時。気温20度。雨。お昼前から風が出て気温下がる。Tシャツでは肌寒い一日。

昨日のこと。

Fさんの同じ集落の方が亡くなり葬儀に出席するため、農園の作業を通常とは違うリズムで進めるようIさん、F井さんにお願いする。

彼の集落では出棺の際、集落の男性が棺を運ぶのが慣例になっているとお母さんから聞いていた。告別式は近くのお寺であるので何かと男手がいるだろうと、「10時までは仕事できます」と有り難い申し出をしてくれたが30分早く上がって良いと伝えていた。

私も配達に出るため農園内の仕事はIさんにノートで細かくお願い済み、ただ昨日は雨で彼女自身の判断で進める仕事も多かっただろうと思う。

時計から目が放させない中での配達。小野田市内は雨足も強く、時間どおりに農園の仕事を進めるには、作業車を運転できないIさんの負担はかなり増えるだろうと心痛めた。

12時すぎ、農園にもどり予想どおりの力仕事をこなしてくれた彼女に頭が下がる。弁当を食べ終わった彼女は机に「つっぷして」昼寝中だった。

朝早くから仕事を済ませてくれる人、自分の仕事をこなしながら園内で仕事をする人を気遣ってくれる人。鶏の産卵ペースに合わせ、私の指示を忠実に守ってくれた人。

みなさんのおかげで、お客さまに新鮮タマゴをお届けできることに心から感謝した。

ホッとした夕食後、Fさんからメール。

「今朝、Iさんからお金の入った封筒を預かったが、どうすればよいですか」

「香典」だとピンときたので、すぐに彼に電話をかけ事情を聞いた。「ご仏前○○」と書かれた封筒を彼女から預かったので、母に渡し記帳してもらいましたとのこと。

Iさんとのノートには「近所」の葬式と書いたが、この「近所」が私の説明不足だったことを反省する。

彼女のお母さんにも電話して家庭内でのやりとりをお聞きしたところ

「ノートを見せて、顔の前で封筒と、その中にお金を入れろと険しい表情でゼスチャーするので三千円入れて渡しました。こんな時、娘は私の言うことを聞きませんから。私の知らないところでお世話になってるかもしれませんし」

雨の中、いつもの倍以上の仕事をしながら、精一杯の心配りをした彼女を発見し、自分の至らなさを見つめ直す。

12年前、当時の町会議員さんから紹介を受けて聴覚障害がある彼女の自宅へ伺ったときは20歳の青白い顔をした華奢な女の子だった。中学卒業後は家で過ごすことが殆ど。反対するお父さんを説得して農園の仲間になった。

私自身、分からないことばかりの鶏との生活。当然、彼女にも充分なことは出来てないと常に感じる。

彼女の生活をグングンと縦に伸ばしてやる歩みは遅いが、横へ横へ根を張るような心使いが出来る自分になりたい。

あだちまさし。