美祢線の思い出


木曜日の三時ごろから美祢を走る。先月の豪雨で厚狭駅から長門市までの美祢線は寸断されている。その錆付いた線路を何度も通過する。
母の里は島根県簸川郡直江。わたしが子供のころ母に連れられ里帰り。出雲駅から乗った蒸気機関車。麻袋に詰めた赤貝・飛び魚の「野焼きカマボコ」は風があたる客車の連結においた。
わたしはトンネルでも窓から顔を出して鼻の穴が石炭のススで真っ黒。顔にあたっていた水しぶきは小便。その列車は益田駅で山口線小郡行きと山陰線下関行きになった。母と寝ていた客車は山陰線に切り替わった。
赤貝にカマボコは見失い、長門市駅から美祢線で厚狭駅に降り立ち。宇部駅から琴芝駅。土産をなくした母と長旅に疲れたわたしはバスもなくお金もなかったのかタクシーは乗らずにぼとぼと歩いた。
美祢線をながめて母との珍道中を思い出した。