チャボとインコのツガイ

農園での仕事を済ませ配達へ出掛ける前に電話が鳴った。

農園の近所に住むという女性からだったが失礼ながら名前もお顔も存じ上げない方からの問い合わせ。

長い間、チャボのツガイを飼育しており、数日前に友人から頂いた別のチャボのツガイを同じ小屋に入れたところ、雄同士が激しい喧嘩をし、一羽の雄が血を流してひどく傷ついたということ。

ご自分なりに観察し、小屋に間仕切りを入れ古いツガイと新しいツガイを隔離して喧嘩は収まったが今後どうすれば良いかの相談だった。

忙しい時間帯だったのが、出血した鶏冠に消毒をした方が良いか等、真剣かつ熱心に尋ねられるので勢いに押されて私が知っている範囲内で鶏の性質をお答えした。

その後、伝染病予防などに質問が移り、少々話が長くなるのが覚悟で、蚊やハエが高温多湿で産卵から孵化の速度をあげる事を例えに挙げながら、同様の鶏を吸血する害虫の繁殖を教え、
害虫が繁殖した時の鶏の症状を見つける方法を3つアドバイスした。

害虫駆除をどうしたら良いかと畳み掛けるように質問されたので

思わず「害虫が増えるようでしたら私が殺虫剤を持って駆除に行きますから」と電話を切った。

飼育しているチャボを心底心配している様子が電話口から伝わり、思わぬ長電話になったが同じ鶏の命を預かる立場として共感できる話しだった。

防府市内へ入って一軒目のお客さまのお宅では昨年からインコを3羽飼育され、玄関で毎日放鳥されている。

ご主人の体が不自由になり出掛ける機会が減ったので、ご家庭での「癒し」をもとめて飼育を始められ、はじめは2羽のツガイだったが、なかなかカップルにならないので後からメスを1羽購入され3羽になった。

玄関先で顔を合わせる度にインコの自慢と季節ごとの鶏の様子を尋ねられるが、相槌に少しだけ毛が生えたほどの会話で済ませ毎週先へ急ぐ。

昨年の秋ごろだったが餌以外に様々な緑餌(りょくじ)を与えるが、なかなかインコが口をつけないと頭を抱えておられたので、鳥には手も歯もないので嘴でひっぱり、喉まで運びやすいものが良いのではとアドバイスしたことがあった。

いろいろな野菜や野草で試され行き着いた先が「豆苗」。鳥カゴの中にインコの餌と豆苗がひと袋据えてありインコが好んで食べている。ちょっと不思議な光景ではあるが。

今朝、配達へ伺った際、ご主人が神妙な面持ちで「最近、後から飼ったメスの羽がたくさん抜ける」と相談を受けた。

カゴに顔を近づけジックリ覗き込んで様子を見たが、かゆみを訴えるような仕草はないのでハダニではないし、好物の豆苗もいつものように短くなっているので食欲も問題なし。

おそらく日長が延び春を感じて「換羽」をはじめたのではないかとお伝えした。ここでもご主人の熱心さに押され、農園での鶏の日長管理を例えに少し長話になった。

参考書などで勉強したことはないが、鶏との生活が長くなり知らず知らずのうちに身についた自分の知識に気付く。

知っているからと言って、すべてが出来ているかというと、そうでもなく。そんな自分の姿勢も反省した。

勢いよく桜も満開になった。桜が散ると気温も上がり、鶏がもっとも苦手な高温多湿の時期を迎える。

また、ひと仕事増えるが、躓かないよう先手、先手で手を打たなければいけない。

あだちまさし。