開花発表

桜の花芽は、前年の夏には形成されて休眠状態に入っている。
花芽は冬に一定期間、冷たい空気にさらされると休眠状態から目覚めるが、これを“休眠打破”という。その後、春になって暖かくなると、日に日につぼみが開花に至る。

今週はじめ、農園の桜が開花した。外周を囲むように流れる厚東川の川岸に植えた20本のソメイヨシノが私たちの景色になって15年ぐらいになる。川に架かる「木ノ瀬橋」を渡って、一番目の桜が標本木。日没までたっぷりと太陽光があたり、枝ぶりもたくましい。その標本木の桜が5、6輪咲いた。農園の開花発表である。

開花発表を前に20本の桜の下草刈りを数日かけて行い、農園の玄関口がスッキリした。

こうしておくと、対岸から眺める、空の青さと、景色の緑、桜の薄桃色のコントラストが川の流れに映え、美しく目を癒してくれる。

私たち以外に標本木の開花を確認するのが、対岸に一軒だけのお隣さんご夫婦。市外に住む息子さんたち家族を招き、花見を催されるのが恒例行事となっている。満開が近づく週末のお昼から賑やかな宴がはじまり、夕方まで盛り上がる。対岸の軒先から眺める景色が一番の絶景なのだ。

今年は4月最初の週末あたりが見頃になりそうだと、一本一本のつぼみの膨らみ具合を確認しながら草刈機のアクセルを握る。薄っすらと緑色が残るように少し高めに揃えながら刈り取ると雑草が咲かせる青や紫、黄色といった花もキレイに見える。陽ざしが強い日にはタンポポが一斉に黄色い花を咲かすことも、こまめに草刈りするようになってから気づいた。

新型コロナウイルスの感染が広がり、一ヶ月前に想定された事態が次々と現実となるなか、日々の仕事を通じて、様々な人との“つながり”を深く考える。お客さまや、鶏の産卵前後でお世話になっている業者さまなど、実に多くの人の流通と消費の上に私たちの営みが成り立っていることを、非日常の現実から、いつも以上に肌で感じる。

日々、忙しく仕事をしていると、目の前の仕事や、自分のことだけで精一杯になりがちだが、もっと想像力を豊かに「共助の心」は失わないようにしたいものだと、今年はじめの下草刈りをしながら考えた。

2020.03.25 あだちまさし