熟読時間は早朝


最初の採卵がおわるのは六時すぎ。次の採卵開始まで約三十分は、読みたい本を急がす熟読の時間。
栄作さんからいただいた秋山好古「秋より高き」秋山大将が陸軍を退き、松山の中学校で校長をされたとき。昭和天皇の生活についての講話を生徒に昭和四年にしている。
なかでもわたしが感銘を受けた講話は、天皇十九歳のとき欧州に遊学されたとき、船中で外国の貴人からタバコをすすめられたとき「日本では二十歳未満の者は喫煙してはいけないから」と断られたくだり。生徒は天皇といえども規則は守る。まして我らは守らねばと理解できたであろう。
午後から磯村千代子先生を訪ねた。数多くのわたしとの思い出を目をとじて話された。帰り際に色紙に一筆書いてくださり「お土産よ」と差し出された。また来るからと手を握った。
その足で母を見舞った。落ち着いて話す内容はとんちんかんなことばかりではあるが、わたしを息子とわかっていることに安堵できた。