日別アーカイブ: 2025年5月28日

盆の豆

農園にかかる木ノ瀬橋手前の圃場を耕すトラクターの音がします。
早朝から園内でひとり作業。近隣から聞こえる農作業の音から地域のつながりを感じ、心があたたかくなります。

地主さんが稲作を止めた圃場は休耕田となっていましたが、今年から担い手に託されて以前のように田に水が入りました。農地を託されたのは、春に「万農塾」に入塾した新規就農をめざす青年です。農園の周辺の農地を借用してお米や、なす、里芋の栽培をされるようで、近隣の農家さんの表情も明るくなったような気がします。

「万農塾」とは、「楠こもれびの郷」併設の農業研修施設。地域の農家さんの指導を受けながら、一年間の農業研修で就農に必要なノウハウを学びます。指導にあたるのは、今年度から塾長に就任した吉部で営農する戎谷さん。私とは同級生です。

お米に関する報道が連日加熱していくなか、田植え作業がはじまっています。農園で働く女性パートさんは長く稲作をされていますが、作業の合間に聞く、農業の喜怒哀楽も十五年以上になりました。苗を仕入れる農家さんがふえる中、自身で発芽させた苗を大事育てる時期は特に神経を使われます。年々、夏の暑さは右肩上がりです。田植えを終えると体力勝負となってきますが、一年に一度しかできない稲作に丹精こめて向き合われる姿を常に目の当たりにしてきました。

お米の店頭価格が高騰するなか、「作れるだけ作る」という総理の言葉は勇ましく響きますが、いつも近くにいる農家さんの息づかいを思うと、どこか心がザワザワします。「当たり前」のようにあったお米が、「当たり前」でなくなった不安から情報の波が一気に過熱し膨らんでいます。何か物事の本質が間違った方向に行かないか、そんな懸念が頭から離れない日々が続きます。

情報過多の現状を憂い、仕事中にパートさんが「お盆の上で豆が転がるようにならなければ良いが」とポツリ。心の中でザワザワする波の音と、お盆の上でカラカラと転がる豆の音が重なります。

2025.5.27 あだちまさし