柳東第二踏み切り


防府市のペットクリニックに着くまで悩んでいた。黒柴犬の子犬をお世話していただくかどうかである。きのう長府でヨボヨボの老犬を散歩している人を見た。犬は立ち止まり長い時間をかけて排便をした。わたしには4頭の犬がおり、10歳・9歳・8歳に4歳。この犬たちが高齢をむかえたときこそよい時間を過ごさねばならないと考えていた「黒柴犬は大好きですが」とわたしの気持ちを正直にお伝えして断らせていただいた。
下松で山陽本線の踏み切りに入った老婆がわたしの正面に見えた。遮断機が降りた。老婆は押し車を反対に向けて出るかと思ったら急いで渡ろうとしている。しかし歩みは遅い「これは危ない」と直感してアクセルを踏みこみ遮断機の前に車を停め飛び降りて警報機が鳴る線路に出た。左右を見ても列車はまだ来ない。押し車を抱えて老婆の手をひいて遮断機の外に出た。すぐに貨物列車が通過した。老婆は「ありがとうございます」と何度もおじぎをした。柳東第二踏み切りの看板があった。しばらくしてから身体が震えた。足の不自由な人にはあの距離が命とりになることがよくわかった。
5時前、農園の橋まで10歳の愛犬が来て座ってわたしを待っていてくれた。車の前をうれしそうに尾をふりながら走る姿は金曜の疲れをわすれさせてくれる。