ばあちゃん困った


美祢市の山あい。老夫婦と猫が平和な毎日を営んでいた。話題からたぶん子供はいないと感じていた。じいちゃんは髭をたくわえて消防団長をした昔の武勇伝を語り、かたわらで指も背中も曲がったばあちゃんがニコニコする。しばらく腰をおろしての会話が楽しみだった。
数カ月まえ、大柄のじいちゃんの足が立たなくなり入院。いまは介護4で動けないらしい。ばあちゃんは「帰りたい」を連発するから家の中に手すりを自分でつけた。けれども足が萎えており無理と思う。病院は3ヶ月を過ぎるので退院をせまる。ばあちゃんは必死でお願いして、もう3ヶ月、来年2月までの猶予をとりつけた。地域の特別養護施設に入れるのはためらった。理由を聞いたら「入れば、出るときは生きてはおらんような気がする」それでも申込はした。約30人待ちで2月に入れるかどうかが一番の心配。
ばあちゃんの涙がかわくまで座っていた。