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自分史1

2014年11月入力

宇部掃除に学ぶ会250回の会報に寄稿した内容を転載

お掃除にであうまえ、よい生き方の願望はありながら、ブレーキのない毎日を過ごしていた。心を定規にあてることができれば、まっすぐか、曲がっているのかわかる。その定規をさがして長年、著名な人の講演を聴いたりや著書を読んだりといろいろ試みたがすぐに取り組んでみようという内容はなかった。

便器を磨いて心も磨く会がある。誰から聞いたのかいまは覚えていない。それを体験してみたい好奇心に、どこで誰に会えばそれが叶うかアンテナをはっていたら、イエローハットに手がかりがあると知り、当時山口県から九州一帯にイエローハット店舗を展開されていた垣内社長を山口市に訪ねた。
そこで、広島掃除に学ぶ会が近々に鍵山先生(当時イエローハット社長)を広島市にお招きして講演会を開催されると日時を教えていただいた。

ひとり広島に行き、中国新聞社ホールで講演「箸よく盤水をまわす」箸で盤水の水をまわすと最初は水は動かないが、根気よく続けると盤水の水は回りだす。小さなことでも続ければ、やがておおきな力になる。トイレ掃除もひとりから始めて続けるうちに自分の生き方がかわり、そのことで会社や家庭もかわりはじめると感動的な講演を拝聴し、探していたものを見つけた気がした。心を磨く掃除をやると決めた。
講演会場で広島掃除の会代表の井辻さん(人生を楽しく生きる達人)が北京掃除に学ぶ会を案内され、その場で申し込みをした。

その後、山口市のイエローハット物流センターの貞方所長を訪ねてセンターで社員さんが毎朝行われる掃除に加えていただき、床やタイルに両手をついての掃除。歯ブラシやタオルをぞんぶんに使う掃除を体験するうちに、仲間を募り宇部で会をはじめたいと思うようになった。貞方所長に会をつくりたいと相談をした。宇部で会をはじめるには、参加者が増えても便器の数が足りる学校がよいと貞方所長からアドバイスをいただき、市内の学校いくつかを歩き掃除会場の提供をお願いしたが相手にもされなかった。理由は、学校の便器を磨くため外部の者を入れたことがない。しかも休日に鍵をあけることは職員の余計な仕事になる。生徒のトイレは生徒にさせる。教師のトイレは業者に委託されていた。

それでも借りなければはじまらない悩みを東岐波の磯村千代子先生(元小学校教師)に相談に行った「わかった!」とその足で東岐波小学校校長室に向かわれた。わたしも同席して校長から承諾を得た。それは運動場にある古い便所。運動会で使用するぐらいで掃除はされていない。鍵をあける必要はない。つまり勝手にやりなさいということである。

記念すべき「第一回宇部掃除に学ぶ会」は、菊川画廊の菊川さん。高山清さん。貞方所長。わたし夫婦の5名でスタートした。東岐波小学校のくみ取り便所は汚れておりたいへん苦労した記憶がある。
掃除をおえて間もなく、宇部市教育委員会の方から個人的な手紙が届いた。内容は、私たちが東岐波小学校で行ったことは非日常的すぎる行為である。という批判的なことだった。反論はせず無視をした。
当時、岐阜の大正村で全国の有志が鍵山先生を中心に掃除を発足してあまり日がたたない時期であり、いろいろな会合で掃除に対する地域の無理解を聞いていたから、その手紙に驚くことも立腹することもなく、むしろ噂どおりの反応があったことに達成感があった。

お湯を沸かすガスの大きな火口とアルミのずん胴鍋は垣内さんから寄贈いただいた。掃除会場まで参加者を誘導するたくさんの種類の看板(電柱に針金でつける)は広島市事業立地の佐古社長から寄贈いただいた。
毎月、東岐波小学校の便器に数名で向き合っているうちに体験してみたいという方があらわれるようになった。掃除が終わり体験発表もプログラムになり、その後の朝食は家内が担当になった。

ある団体の役職をいただき、定期的に会議に出るようになった。あるとき提案した「会議のまえ、短い時間でも会場周辺の清掃をしませんか」と。掃除が大切なことぐらいは知っていると言わんばかりの失笑をかった「知っている」と「やっている」のちがいをのべても無駄な空気だった。わたしも「知っている」の側に以前はいたから笑いは理解できた。

鍵山先生にはたくさんのご指導を頂戴した。それを言葉にすれば「謙虚」。わたしにまで深々と頭を下げられる。掃除に学ぶ会草創期の全国の志たかく生きておられる方々にも親しくしていただき会報「清風掃々」発刊メンバーにも加えていただいたことは人生の金メダルと思っている。

50回の記念掃除は、県鴻城高校を会場に盛大に催された。この会をもってわたしは宇部の会から離れ、農園でハンディを持つ人と鶏を飼うことに専念をはじめた。
以来約13年。自宅に戻らず農園で寝起きしている。食事の都度食器を洗い棚にしまう。台所は使う度に磨く。トイレと風呂も新品にちかい輝きが維持できている。
当たり前のことができるわたしにお掃除が育ててくれた。

宮川さんから依頼を受け、250回記念のお祝いに、わたしの思い出を書かせていただきました。
お掃除仲間のみなさんありがとうございます。
足立進