嘘も方便


長崎県島原市に松光学園という障害者施設がある。20数年前、原留男という福祉に命がけの男が設立した。ご自身が今後受けとる年金も返済計画に入れた。わたしも心意気で精一杯の協力をした。その建築費が完済したお祝い行事の案内があり学園に電話をしたら、信じられないが電話に出た者が原留男を知らない。すぐに原先生の自宅に電話をしても誰も出ない。一週間で20回ちかく呼び出して、きょうの昼につながった。相手は奥さま。
主人は身体が動かしにくいから電話口まで時間がかかります。そこで嘘を言った「来月7日の午後から諫早市で掃除の会の会議がありますから、その前の10時ごろ留男先生に会いに行きますと伝えてください。諫早まで走りますからお昼前には残念ですが失礼します」奥さまは何度も「ありがとうございます」を繰り返された。留男先生は終戦時、特攻隊志願で飛行機訓練中だった。おだやかな顔つきでも、筋金入りの精神力は島原宴会で一緒に騒いだ松村御大もご存知。ご健在なときに会っておかねばならない大切な恩人。