母の17文字

人住まぬ たわわの柿を 見て通る

野菊手に 道譲りあう 会釈かな

散り際は 椿も同じ 人の世も

このような17文字を、母は誰に見せる意図もなく、大学ノートにたくさん遺してくれた。
毎晩ページをめくり、母の心中にふれている。
わたしの出生のことは一度も口にしなかった。けれども、日常を句に詠みながら、楽しみながら生きていたことがわかる。
金品を遺すよりも、時々の心模様を鉛筆文字に遺してくれた宝物。

生前にはわからなかった母が現れた。今夜も母の心のページをめくる。

きょうの歩数(12000歩)

ひと晩の
ロマンあつめて
朝の月