人間関係


配達さきで苦手な人が何人かいる。苦手とは挨拶しても無視される人で男性である。わたしが気にいらないのではなく、もともと無愛想だと思うようにしている。
そのひとり。大男の現職警察官。鋭い目つきで奥さまに手渡すようすを玄関の奥からわたしを見た。そばに金魚鉢があり立派なランチュウが一匹「見事なランチュウですね」とご主人に声をかけた。あの目つきが優しくなって「どから来たかね」と警察官らしい挨拶ではじまり、金魚の生態を詳細に話し出した。わたしは聞き役。笑顔で最後は見送ってくださった。
もうひとり。半年の入院をおえたおじいさん。これまで会話を交わしたことはない「退院おめでとうございます」と挨拶したら玄関に来られて「腸を40センチ切った。その後は放射線治療」と最悪を覚悟して生還した喜びを笑顔で話された。
会話のベルトがかからないことがあるけれど、どうせならば楽しい配達にしたい。わたしなりに目線をあげて取り組みたい。