一隅を照らす人


ご高齢夫婦に週10個の配達をしている。ご主人は倒れた後遺症でほとんど寝たきり。お日様にあたらないので肌は白い。奥さまはその主人の介護をしながらガンを宣告された。手術が難しい場所らしく抗ガン剤投与が唯一の治療である。この主人は肥後生まれで亭主関白を布団のなかでも言葉で実践する。
ご近所のかたにそっと聞いてみた「お子さんはおられないのですか」と「はぁ、どうも障害があるようで施設のお世話になっておられるようですよ」と小声で言われた。ご自身が病気であるのに市の広報を、目の不自由な方にお知らせする朗読ボランティアをされている。テープレコーダーに向かって明瞭に読んでおられる。
日本の福祉!日本の老人問題!と声高らかに言わずとも、大きく世の中を変ようとしなくても、力強くご自身の人生を歩んでおられる姿に感動をおぼえる。