日別アーカイブ: 2016年7月23日

農夫の一日

朝6時。気温20度。晴れ。最高気温30度。Iさん休み。

6時半からFさんは配餌車にて給餌。私は採卵。飼料タンクのモーター音。作業者のディーゼルエンジン音。ちょうど同じくらいの時間から隣接する畑の地主さんがトラクターにて荒鋤き。川からこっちは3人しか人間はいないが賑やかで慌しい一日のはじまり。

8時ごろ給餌が終わり、私も採卵の手を止めた。ここまで鶏舎を一周半で約三分の一集卵。Iさん分を二人で前倒しに作業。俗に言う「朝飯まえの仕事」。少し休憩を入れ汗を拭いて仕切りなおし。ここから本格的に土曜日業務のスタート。Fさんは残りの採卵。私はタマゴの選別、検品、パック詰め。いつもより私の作業は押し気味になるだろうと予想していたが、この時間になって、今夜が花火大会だったことを思い出す。

直売所の開店時間までに、予約頂いているタマゴと午前中配達分がパック詰めできるか心配だったが、夕方、市内中心部が混雑しそうなので回避したかった。少し遠回りしてでも午前便で市内中心部の配達分も済ませておきたかったので自分のお尻に強めの鞭を入れて作業。

10時半、予定していた数量のパック詰めを終え、直売所販売分、配達分を車に積み込み出発。途中、木陰に車を止めて、家内が作ってくれた弁当を胃袋に詰め込む。自宅に着くころには計画どおりの睡魔に襲われ、荷物も降ろさず扇風機をつけて15分仮眠。家内は開店時間前に自宅付近のパン屋さん、飲食店など配達し、私は市内中心部のお客さまを経由して農園へ戻る。日頃、休日のランチタイムの様子を知らないので、夏休みも重なった交通量の多さで思い通りに行かなかったが、15分の仮眠で心のゆとりは保てた。

13時すぎに農園へ戻る。予想どおり、私の作業場所周辺は検査前タマゴが、いつもの土曜日より高く積んである。今週はじめから先月末に入荷した雛が本格的に産卵をはじめたため選別作業に少々時間がかかりそうな気がしたが、もう一度、自分のお尻に鞭を入れ作業に取り掛かった。14時半ごろFさん帰宅時に「近所の方に差し上げて下さい」と、規格外の初産みタマゴを少し多めに預けた。日差し厳しい早朝からの仕事だったと思うが、気持ち笑顔で農園を後にし安堵する。この時間くらいから想定外の空腹に襲われ、作業のペースが落ちる。途中、塩飴を口に入れたり、腰掛けてアイスを食べてみたり。16時すぎにやっとの思いでパック詰めを終えた。

運動場には、まだまだ遊び足りない鶏がたくさんいたが鶏舎に追い込む。若い群は、まだまだ私の表情を読み取ることが出来ないので、手こずりながら。私の事情を説明しながら箒でお尻を叩き若い鶏にご理解いただく。カンベン。

17時前、午後配達分と本日発送するタマゴを車に積み込み出発。時計と睨めっこしながら焦る気持ちをおさえてハンドルを握る。車内は「ワレモノ注意」の鶏さんと私たちで一日汗水流したタマゴ満載だから。18時の集荷に間に合わず、最終受付19時前の営業所に持ち込むことになる。

自宅では中3長女が花火大会に出掛けるため浴衣に着替え中。彼女の出発時間は18時半。時計と睨めっこしながら荷物のリミットが気になる私。出発前に長女の同級生で双子の「ゆず、ひな」が浴衣で来店。私はかなり胸踊り、彼女たちの会話に割り込むものの、店内には未出荷の荷物あり。家内を急かし、何とか今日の出荷を終えることができた。

新鮮、安全をモットーに産みたてタマゴをお届けする農夫の一日。

今日も一日ありがとうございました。

あだちまさし

蝉の鳴き声

朝6時。気温20度。晴れ。仕事を前倒しに済ませたかったので、早めに家を出る。自宅から農園まで、やや東向きに走るため、山の間を抜ける道は窓を開けて走ると夜の冷気が残りクーラーより心地良し。もしろ今朝は寒いぐらいだった。

ゆっくり上がる太陽光線が直接あたると夏本番の感じがするが、朝夕の影の長さを見ると季節は確実に秋に向かっていると実感する。

6時ごろから鶏舎をひと周り採卵。餌の減り具合も良好。死鶏なし。卵殻のツヤよく、集卵数は少なめだったが安心した。その後、パック詰め。8時すぎに蝉の大合唱と、時折、クルクル回る風見鶏を見ながら配達へ出発した。

金曜日配達に伺うお宅に少し気になる小さい男の子がいる。

チャイムを押すと男の子が思い切りの笑顔で飛んでくるが、彼が想像していた来客と違ったようで、私の顔を見るとお爺ちゃんやお婆ちゃんの後から、やりとりを曇った顔で伺っている。

向かいの奥さまとも仲良しで楽しそうのおしゃべりし、奥のお宅の、私にはまったく懐かない番犬も彼にはシッポを振る。

配達に伺うようになって一年以上になる。毎回ではないが、かなりの頻度で顔を会わす可愛らしい男の子。年頃は小学生前ぐらいと想像していた。

大人嫌いとは逆で「お話しようよ」といった表情で私を見るが、何となく話かけることを躊躇する。男の子のお宅へ伺う時間は午前10時前後。

事情を尋ねたことは一度もないが、平日のこの時間帯に私が愛想よく言葉かけするのは、何となくだが「躊躇」するのである。

先月の集金の際、お爺ちゃんが財布を捜しに奥に入られた時間、玄関先で彼と二人きりになった。「お話しようよ」の表情で見つめられ、しばらく辛抱していたが間が持たず私の方から年齢をきいた。

元気よく右手を開きながら「5才!」。まだまだ聞いてという表情だったが、私からは「へぇー」とだけ答える。子供嫌いではないが「お話しようよ」の彼にとって、私は話し相手として適切ではないと、何とな「躊躇」するある。

今日伺った際、玄関先に近づくと庭の方から蝉の鳴き声が聞こえ、農園を出発する時のそれより大きな鳴き声が少々気になりながらチャイムを押したところ、庭先から蝉がたくさん入ったカゴを抱えた男の子が「蝉とったよ!!」と走って来た。

汗で髪の毛が濡れ、初めて見る5才の思い切りの笑顔に押されて、「すごいねぇ」と表情がゆるんだ。庭に目をやると、お爺ちゃんがランニング姿で汗を拭いておられる。二つ三つ言葉かけをするが「もっとお話しようよ」の彼に、やはり「躊躇」するのである。

5才の夏を思い切り満喫してほしいなぁと感じながらお宅を後にする。

今日も一日ありがとうございました。

あだちまさし